研究課題
本年度は、昨年度に検討した炎症性ストレスモデルであるLPS投与マウスでの、脳内プリン代謝関連分子の発現変化を中心に検討を進めた。LPS投与マウスでは、オープンフィールド試験、高架式十字迷路試験、強制水泳試験の複数の行動解析で不安様行動や抑うつ行動が観察された。LPS投与により海馬、大脳皮質、脊髄においてプリン代謝酵素のENTPD1(ectonucleoside triphosphate diphosphohydrolase 1)やADA (adenosine deaminase)の発現変化がリアルタイムPCR法で示された。また、アストロサイトとミクログリアの活性化マーカーの一部が増加していた。大脳皮質のアストロサイトミクログリアをそれぞれ分離培養してLPSと処置したところ、プリン代謝酵素の発現変化が観察されたが、in vivoで得られた結果とは必ずしも一致しなかった。これらの結果から、LPSによるニューロンへの影響や行動変化にグリア細胞が関与していることが示唆されたが、これらの細胞に対するLPSによる直接的な作用以外のメカニズムが関与している可能性がある。また、アストロサイトの機能変化と密接に関わっている突起形態の変化の解析法の検討も行った。海馬アストロサイトをアストロサイトマーカのGFAPで免疫染色し、その突起形態をSMorphを用いて自動的に解析した。この手法を用いてα2アドレナリン作動薬によるアストロサイト突起の退縮作用を評価したところ、個々のアストロサイトにルシファーイエローを注入して評価した結果と一致していた。
2: おおむね順調に進展している
LPS投与モデルにおける検討はおおむね順調にすすんでいる。また、多数のアストロサイトの形態を客観的に測定する実験系を確立することができた。
今年度より、ストレスホルモンであるコルチコステロン投与によるうつ病モデルの検討を開始しており、今後はこのモデルでの結果をLPS投与モデルと比較検討する計画である。また、アストロサイトの形態評価の実験系を確立したので、この評価をうつ病モデルやそれ以外の条件にも幅広く活用していく。
参加学会がオンライン開催となり、その費用を来年度の学会参加費用に充当する。また、本年度に投稿予定であった論文を、次年度に投稿するためその費用として使用する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件)
iScience
巻: 25 ページ: 104122~104122
10.1016/j.isci.2022.104122
European Journal of Pharmacology
巻: 928 ページ: 175110~175110
10.1016/j.ejphar.2022.175110