研究課題
コウモリは人に致死的な肺炎、出血熱、脳炎等を起こすウイルスの自然宿主と考えられている。本研究計画では、申請者の所属する研究施設に保管されているインドネシアのコウモリから採集した検体を使用して、公衆衛生学的に重要と考えられるコウモリ由来のウイルスの存在を明らかにすることを本研究の目的とする。令和5年度においては我々の研究グループが2010年から2014年にかけて、スマトラ、ジャワ、スラウェシで採集したコウモリを対象として、肺(167検体)、口腔スワブ(45検体)、糞便(91検体)を哺乳類由来細胞 (Vero T2-hACE2)細胞に接種して細胞傷害効果(Cytopathic effect: CPE)が確認された細胞からウイルスを分離する事に成功した。CPEを呈した細胞に接種した3検体は、いずれもジャワ島で採集した3頭のジャワオオコウモリ(Pteropus vampyrus)から採集した糞便であった。分離したウイルスについて全ゲノム解析を実施した結果、3つのウイルス由来のゲノムは99%のゲノムの相同性を有する哺乳類オルソレオウイルスである事が判明した。次に電子顕微鏡で形態学的観察を実施して、分離した哺乳類オルソレオウイルスは典型的なレオウイルスの形状である、約80 nmの直径を有し、球形の車軸状の形状を有し、さらに二重の層を有するタンパク質のカプシドを有していた。さらに、ウイルスゲノムの構造を解析した結果、単離したウイルスは10本のゲノムを有しており、既存の報告と73.3-95.3%の相同性を有しており、血清型2に属する事が明らかになった。さらに、種々の哺乳類由来の細胞での増殖性を比較した結果、BHK-21細胞(ハムスター腎臓由来)、HEK293T細胞(ヒト腎臓由来不死化細胞)、A549細胞(ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞)で増殖性が良い事が明らかになり、ヒトへの感染が生じる可能性を明らかにした。
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https://www.czc.hokudai.ac.jp/pathobiol/
https://www.ivred.hokudai.ac.jp/