研究課題/領域番号 |
21K05954
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
関 まどか 岩手大学, 農学部, 助教 (20700488)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 人獣共通感染症 / 寄生虫 / 肝蛭 / 単為生殖 / 2倍体 / 3倍体 / 定量的PCR |
研究実績の概要 |
肝蛭(かんてつ)症は世界中で発生する人獣共通感染性の吸虫症で、畜産業に吸虫類で最大の経済被害を与えている。アジアには単為生殖型肝蛭が分布する。単為生殖型肝蛭には祖先種と同じ2倍体に加えて、3倍体がある。単為生殖型3倍体は病害が強いため、被害状況の把握が強く求められている。しかし、鑑別が困難なため、アジアでは人体症例の原因種すら、正確に診断されていない。さらに、分類学的な種が未確定のため、医療・獣医療従事者に正しく認識されていない。そこで本研究では、定量的PCR法を開発し、単為生殖型3倍体の遺伝子型を解析する。これにより、3倍体の ① 分子学的鑑別法が世界で初めて確立され、② 大規模疫学調査が実現する。さらに、遺伝子型の解析により、3倍体の出現様式を解明できるため、③ 単為生殖型肝蛭の分類学的位置を決定できる。本研究は医学・獣医学を横断する寄生虫学に計り知れないインパクトがある。 本年度は、単為生殖型3倍体の遺伝子型を解析するための定量的PCRのプライマーを確立した。はじめに倍数性が明らかな実験室株2倍体、3倍体に適用し、その有効性を確認した。次に世界各地から入手した野外株に定量的PCRを適用した。その結果、理論通りに単為生殖型肝蛭の遺伝子型を識別することに成功した。このため、次年度以降に大規模疫学調査を実施する準備が整った。この大規模疫学調査により、単為生殖型肝蛭の2倍体と3倍体の遺伝子型が明らかになり、その出現様式を解明できると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単為生殖型2倍体と3倍体の遺伝子型を識別する定量的PCRの開発に成功したため。また、この定量的PCRが、実験室で継代している実験室株、野外株の双方に有効であることが確認できたため。さらに、肝蛭症の流行地域から、虫体や抽出済みのDNAを入手し、今後、この定量的PCRを大規模疫学調査に適用する準備が整ったため。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、本年度は定量的PCRの開発に成功し、その有効性を確認できたことから、本研究はおおむね順調に進展している。一方、1年目の目標としたTaqManプローブを用いた定量的Multiplex PCRについては検討できなかった。2年目以降は定量的Multiplex PCRの確立にも取り組み、より精度の高い遺伝子型の解析を実現したい。
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