研究課題/領域番号 |
21K05961
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
佐藤 雪太 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (40271762)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ヌカカ / 初検出 / ヘモプロテウス原虫 |
研究実績の概要 |
本研究では、国内の鳥類で伝播維持されており、近年は動物園・水族館飼育下のペンギン類など生息域外で飼育されている鳥類で感染が見られ、宿主への影響が懸念されるヘモプロテウス(Haemoproteus)属原虫のベクターとなる昆虫種を解明することを目的とし、1) 国内でこれまでにヘモプロテウス感染が確認された野鳥が生息している地域や、感染個体を飼養している飼育展示施設周辺でヌカカ類を捕集し、2) ヌカカの種類を同定してDNAを抽出し、PCRにより原虫DNAおよび ヌカカ体内に残存している可能性がある吸血対象動物DNAの増幅を試み、3) 増幅産物の塩基配列を決定し、原虫種を同定してヘモプロテウス原虫DNA保有状況を解明して吸血対象動物も推定することとした。 本年度は、前年度までコロナ禍の影響で進められなかった各種ヌカカ類からの原虫DNAの探索を実施できた。その結果、国内のニワトリヌカカ、キブネヌカカなど複数種のヌカカ類から、国内の鳥類が保有するヘモプロテウス原虫DNAの増幅が認められた。これは国内で初めて確認された知見であり、本研究の根幹となる課題が解明された。この成果は本年度中に国際専門誌で発表することができた。 なお、一部の原虫は宿主鳥類に対して病原性が問題になる可能性も考えられ、引き続き国内のヘモプロテウス原虫の感染状況について監視して行く必要がある。 次年度(2023年度)はさらに調査地域を拡大し、国内におけるヌカカ類の原虫媒介者としての役割を評価する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までに、国内のヌカカ類からヘモプロテウス原虫DNAを検出することができた。さらに検出された原虫DNAの配列解析により、これまで国内の鳥類から報告があるヘモプロテウス原虫も含めた系統と近縁であったことから、これらのヌカカ類が国内のヘモプロテウス原虫の媒介者であることが示唆された。以上の結果は学術論文に取りまとめ、国際専門誌に投稿して採択されたことにより、研究課題の根幹はほぼ解明されたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、ヌカカ類が吸血した鳥種をDNA解析により推定することにより、国内におけるヘモプロテウス原虫の感染サイクルが解明されると期待される。 引き続きサンプルを捕集し、原虫DNA保有状況も調べながら課題解明を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度より調査機会が増加したが、当初予定していたサンプル数は確保できず、解析が停滞したため次年度使用額が生じた。 次年度は採集調査機会が計画通り見込まれることから、必要な解析費用を中心に使用する予定である。
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