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本研究は、国内の鳥類に広く感染が見られ、動物園・水族館飼育下のペンギン類など生息域外で飼育されている鳥類への影響が懸念されるヘモプロテウス（Haemoproteus）属原虫のベクターとなる昆虫種を解明することを目的とし、1)これまでにヘモプロテウス感染が確認された野鳥が生息している地域や感染個体を飼養している飼育展示施設周辺でヌカカ類を捕集し、2)種を同定してDNAを抽出し、PCRにより原虫DNAおよびヌカカ体内に残存している可能性がある吸血対象動物DNAの増幅を試み、3) 増幅産物の塩基配列を決定して原虫種を同定し、吸血対象動物も推定してベクターとなるヌカカ種を探索してきた。
前年度までに、ニワトリヌカカ、キブネヌカカなど複数種のヌカカ類から、国内の鳥類が保有するヘモプロテウス原虫DNAの増幅が認められ、国内で初めて確認された知見となり、本研究の根幹となる課題が解明された。この成果は国際専門誌に発表し、海外の研究者からも注目されることとなった。なお、一部の原虫は宿主鳥類に対して病原性が問題になる可能性も考えられ、引き続き国内のヘモプロテウス原虫の感染状況について監視して行く必要がある。
本年度は、研究代表者が所属研究機関を変更したため、当初予定していた調査対象地域の拡大や国内におけるヌカカ類の原虫媒介者としての役割の評価が十分には達成できなかった。しかし、新たに新潟県のヌカカ類からヘモプロテウス原虫DNAを検出したほか、北海道の希少鳥種から新種と考えられるヘモプロテウス原虫を確認し、国内における本属原虫の感染状況の理解が深まった。さらに、鳥類の住血原虫に関する膨大な知見を有し世界的に認められているリトアニア自然研究所寄生虫学研究室長のGediminas Valkiunas博士を訪問し、これらの成果を直接説明して国際的見地からも本研究の意義を評価された。
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