研究実績の概要 |
令和4年度は、2022年10月から2023年3月までを対象とし、15道府県の鹿170頭、5県の猪41頭の直腸便を供試した。各糞便1gを9mlのPreston培地に接種し、微好気条件下、37℃および42℃で48時間増菌培養後、mCCDA寒天培地およびスキロー血液寒天培地で微好気条件下、37℃および42℃で48時間分離培養した。純培養したコロニーからDNAを抽出し、PCR法で菌種を同定した。さらにPCR法によりChの細胞膨化致死毒(CDT)遺伝子chcdtⅠ、chcdtⅡの保有状況を検討した。鹿、猪由来Ch分離株の病原性解析のための予備的な検討として、Ch標準株を用いて、ヒト腸管上皮細胞株(caco-2細胞)への感染実験を行い、経上皮電気抵抗(ter)値を計測した。 鹿の7頭(4.1%)、猪の20頭(48.8%)からそれぞれ27株、42株のCampylobacter属菌が分離された。分離株は全てChであった。鹿由来の22株(81.5%)、猪由来の17株(40.5%)はchcdtⅠ/Ⅱの両方を保有し、鹿由来2株(7.4%)、猪由来の9株(45%)はchcdtⅡのみを保有していた。令和4年度新たに、chcdtIBのみ陰性の株が鹿由来2株、猪由来10株、chcdtIA, IBのみ陰性を示す株が鹿、猪ともに1株、さらにchcdtIIA,IIB,IIC陰性株、chcdtIIB陰性株、chcdtIIA,chcdtIIC陰性株、chcdtIB, IIA, IIB, IIC陰性株、chcdtIB, IIB陰性株がそれぞれ1株づつ認められた。Ch標準株をcaco-2細胞に感染させたところ、MOI10で感染させ、48時間後にter値が65.1%まで減少したことを確認した。
|