研究課題/領域番号 |
21K05966
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
大屋 賢司 国立医薬品食品衛生研究所, 衛生微生物部, 室長 (50402219)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 病原性大腸菌 / 食中毒 / ゲノム / 疫学 |
研究実績の概要 |
代表的な非定型下痢原性大腸菌である astA 保有大腸菌は、大規模食中毒の原因となるが、astAを保有する株が必ずしも下痢原性を有するわけではなく、病原性株と非病原性株の実態は不明の点が多い。本研究では、astA保有大腸菌などの非定型下痢原性大腸菌の比較ゲノム解析と MALDI-TOF MS (Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)を用いたプロテオタイピングによる系統分類を行い、下痢原性大腸菌としてのカテゴリーを確立させることを目的とする。R3年度までに、家畜、食品、ヒトから分離された非定型下痢原性大腸菌についてRAPD(random Amplicication Polymorphic DNA)法により株間の関連性を検討した。R4年度はRAPD法による解析結果を基に、ゲノム情報の少ないヒト由来astA保有株のゲノム情報を充実させるために、下痢症との関連性のないヒト由来astA陽性大腸菌18株のゲノム解析を開始することとした。次世代シークエンス解析に供した検体では十分なカバー率のリードからドラフト配列が得られ、ゲノム解析を進めている。MALDI-TOF MSによるプロテオタイピングに関しては、定法のrRNA以外に系統分類をできるマーカーの同定はできていない。R5年度は、18株全ての配列を取得し、これらの株とデータベース上に存在する株の比較解析による系統分類を行い、非定型の下痢原性大腸菌として鑑別に必要なマーカー遺伝子もしくはプロテオタイピングの標的分子の同定を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
非定型下痢原性大腸菌の比較ゲノム解析に関しては順調に進んでいる。これら大腸菌のプロテオタイピングに関しては、定法で用いているrRNA以外の標的を同定できておらず、進捗は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
astA保有大腸菌に関しては、ヒト下痢症由来株、各種動物からの分離株に関してはゲノム情報が整いつつある。しかしながら、下痢症との関連のないヒト由来株に関しては情報が不足している。そこで、当該18株の配列決定を目指すこととした。このうち幾つかの株については完全長ゲノムの決定を目指し、他株との詳細な比較解析による系統分類を行い、鑑別マーカー同定を目指す。プロテオタイピングのためのマーカーとしては、TOF MSで波形として十分検出できる分子に注目し、遺伝子レベルでの多様性が認められるものに関してマーカーとしての有用性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力者の分離した株を使用することにより、株の分離に使用する予定であった培養等に関する費用を繰り越した。当該費用は、R4年度に開始した下痢症との関連のないヒト由来株のゲノムについて、完全長ゲノムを決定するために主に用いる。
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