• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

魚類免疫機能の種独自性の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K05969
研究機関宇都宮大学

研究代表者

岩波 礼将  宇都宮大学, バイオサイエンス教育研究センター, 特任准教授 (10360504)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード免疫システム / 魚類 / メダカ
研究実績の概要

本研究では、小型魚類のモデル動物であるメダカを用いて比較ゲノムと機能解析により、魚類の種間で共有された免疫システムの機能と種内で独自に獲得された機能を明らかにすることを目的とし、以下の2つの研究実施を計画した。
①メダカ自然免疫および適応免疫システムの役割と腸内細菌との相互作用の解明
②メダカサイトカインシグナルネットワークの解明とNK細胞の同定
①においては、まずゼブラフィッシュの方法をメダカ用に変更を加えることによりgerm-free条件でのメダカ幼魚の育成に成功した。germ-freeメダカでの腸管発生異常が明らかになり、transcriptome解析を進めている。また、メダカ自然免疫および適応免疫の免疫不全変異体群を作成、樹立した。T細胞マーカーのプロモーター下でEGFPを発現するトランスジェニックメダカを作成して変異体と交配したところ、適応免疫不全変異体では幼魚期も生体においても胸腺Tリンパ球の減少が確認され、成魚で腸内細菌叢の変化に引き続いて生存期間の短縮が認められた。
②においては、先進ゲノム支援による野生型および適応免疫不全変異体の腎臓(一次造血組織)内リンパ球分画のsingle cell transcriptome解析をお願いした。その結果、変異体で成熟T細胞とB細胞の欠失が確認されるとともにNK細胞分画を特定でき、サイトカイン受容体を含めてNK細胞特異的に発現する機能遺伝子の候補を得ることができた。これらの遺伝子を欠損するメダカ変異体の作成を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

①において、germ-free条件でのメダカ育成手法の確立し、腸管の表現型解析とトランスクリプトーム解析を進めており、順調に進行している。また、適応免疫不全変異体群やT細胞特異的EGFPトランスジェニックメダカの樹立も成功し、表現型解析と腸内細菌叢の比較に進んでいる。自然免疫不全変異体は作成後にメスが得られない世代があり、ヘテロ同士の交配が遅れたが、最近交配を始めることができた。
②において、当初はil2rgプロモーター下で蛍光を発現するトランスジェニックメダカを作成し、rag1変異体と掛け合わせることでNK細胞をソートして発現解析することを計画していたが、先進ゲノム支援でrag1変異体のsingle cell transcriptome解析を依頼できることになり、トランスジェニック作成の必要性がなくなった。NK細胞の発現解析により、サイトカイン受容体、抗微生物ペプチドを含めたNK特異的機能遺伝子候補を挙げ、それらの欠損変異体を作成し始めている。またNK細胞の有無による免疫不全表現型の重篤度の比較のためのil2rg変異体とprkdc変異体の交配も進んでおり、研究は概ね順調に進行していると考えられる。

今後の研究の推進方策

①において、適応免疫不全変異体メダカではゼブラフィッシュと異なり生存期間の短縮が見られるものの、2-3ヶ月齢までは正常であることが分かった。この時期までに自然免疫から適応免疫への移行が起こるのではないかと仮定し、自然免疫不全と適応免疫不全の変異体およびダブル変異体の表現型を比較する予定である。これにより、自然免疫と適応免疫の分担を明らかにしたいと考えている。また、適応免疫不全変異体のメタゲノム解析を進め、生存に影響する腸内細菌の特定を目指すとともに、感染実験を計画している。
②において、まずはNK細胞のマーカー遺伝子と考えられるサイトカイン受容体と抗微生物ペプチドの欠損メダカを作成、樹立する。それにより、NK細胞の生体内での機能を明らかにすることを目指す。また、抗微生物ペプチドの投与により適応免疫不全を補填しうるかどうか検証する。また、single cell transcriptome解析により見つかったNK細胞特異的サイトカイン受容体を手始めに、サイトカインおよびその受容体欠損による免疫細胞分化、活性におけるサイトカインシグナルの役割を調査し、哺乳類や他の魚類との比較による種特異性と共通性の理解を目指す。

次年度使用額が生じた理由

消耗品の一部は他の財源から捻出したため2021年度の支出が抑えられました。2021年度中の購入は見合わせたため繰越が生じましたが、2022年度初頭に実体顕微鏡(70万円)等の購入に充てる予定です。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] Understanding the species-specific nature of the fish immune system2021

    • 著者名/発表者名
      Norimasa Iwanami, Yuna Sato, Ryo Matsumoto and Masaru Matsuda
    • 学会等名
      第27回小型魚類研究会

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi