本研究では、小型魚類のモデル動物であるメダカを用いて比較ゲノムと機能解析により、魚類の種間で共有された免疫システムの機能と種内で独自に獲得された機能を明らかにすることを目的とし、以下の2つの研究実施を計画した。 ①メダカ自然免疫および適応免疫システムの役割と腸内細菌との相互作用の解明 ②メダカサイトカインシグナルネットワークの解明とナチュラルキラー (NK) 細胞の同定 ①については、免疫不全を示すil2rg変異体メダカにおける腸内細菌叢のバランス異常から、メダカの免疫系は成魚における正常な腸内細菌のバランスの維持に必要であることを明らかにした。一方、germ-freeメダカにおける腸管上皮の成熟遅延と自然免疫関連遺伝子の発現異常から、メダカ免疫系の成熟には腸内細菌と腸管上皮細胞の相互作用が必要であることを明らかにした (Front Immunol 2023)。②については、適応免疫不全メダカのリンパ器官内のリンパ球を用いたscRNA-Seq解析によりナチュラルキラー (NK) 細胞のマーカー遺伝子を特定した。そのうちサイトカイン受容体サブユニットの変異体ではNK細胞の欠失が見られ、エロモナス属の細菌感染に対する致死率が上昇した。このことから、メダカNK細胞は細胞内寄生細菌に対する免疫応答に重要な役割を持つことが明らかになった (論文準備中)。 本研究により、メダカ免疫システムの機能に関する知見を得ることができ、ゼブラフィッシュを含む他の魚類との比較による種特異性と共通性の理解への足がかりとなる。
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