本研究では、自然免疫誘発物質によって活性化&誘導される自然免疫型の制御性B細胞(Breg)の実態とその作用機序の解明を目指した。1-2年目では、炎症性物質のひとつであるリポ多糖(LPS)の刺激によって活性化されたB細胞の一群は、転写調節因子IkappaBNS依存的に抗炎症性サイトカインであるIL-10を産生すること、及びそれらのB細胞が生体内/生体外でIkappaBNS依存的にT細胞やマクロファージの炎症応答を抑制することを明らかにしていた。 3年目は、様々な条件で標的細胞と培養することによって、LPS刺激によって発揮されるB細胞の炎症抑制機序を解明することを試みた。具体的には、標的細胞としてマウスT細胞とマクロファージ様細胞株を用い、直接接触培養、非接触共培養、放射線照射B細胞との共培養、IL-10阻害剤添加条件下での共培養などを行った。その結果、LPS刺激B細胞は細胞間の直接接触と可溶性因子の両方の抑制経路を通じて標的細胞の炎症応答を制御していることが示唆された。また、その炎症制御機序として、標的細胞による炎症性サイトカインの抑制と抗炎症性サイトカインの産生誘導の両者が確認された。さらに、LPS刺激によって誘導されるBregでは、一般的にBregの主な抑制機序として知られるIL-10の分泌以外にも、炎症性サイトカインであるIL-6を含む様々なサイトカイン類が分泌されることがわかった。自然免疫型Bregが発現するIL-10以外の抑制因子の同定と細胞表面の抑制因子の同定は今後の課題であるが、本研究によってIkappaBNS依存的自然免疫型Bregの機能の一端が解明され、自然免疫型Bregを活用した炎症制御や疾患治療への応用が期待される。
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