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2022 年度 実施状況報告書

滑膜マクロファージに着目した関節リウマチ病態の性差メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K05974
研究機関愛媛大学

研究代表者

佐伯 法学  愛媛大学, 学術支援センター, 講師 (80791607)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード関節炎 / マクロファージ / エストロゲン受容体 / 性差 / scRNA-seq
研究実績の概要

我々は、関節リウマチ病態に生じる性差をマクロファージのERαシグナルに着目して解析を進めている。昨年度、myeloid cell特異的ERα欠損マウス (cKO, LysMCre; ERαflox/flox )を作出し、マクロファージに発現するERαは女性ホルモン依存的に関節炎病態を増悪することを示したが、本年度はその詳細を以下の如く明らかにした。
Flow cytometory解析で、Control (ERaflox/floxおよびLysMCre; ERαflox/+)とcKOの末梢血単球の割合に変化が認められなかったため、ControlとcKOのパラバイオーシスを作出し両マウスに関節炎を誘導したところ、cKOで関節炎病態の抑制が認められた。このことから、滑膜マクロファージのERαシグナルが関節炎病態に寄与することが示唆された。また、scRNA-seq解析により、関節炎誘導後3日目の滑膜組織では、滑膜マクロファージクラスターの割合がcKOと比較してControlで減少した。さらに、ControlとcKOの滑膜マクロファージクラスター間で発現変動していた遺伝子のGO解析により、免疫反応関連や細胞内代謝関連の遺伝子がcKOで有意に減少していることが明らかとなった。そこで、ERαシグナルがマクロファージの代謝機能に及ぼす影響を明らかするため、M1及びM2に分極化した骨髄由来マクロファージの細胞内代謝をFlux analyzerで解析した。その結果、Control由来細胞と比較してcKO由来細胞で、M1で細胞外酸化速度が減少し、M2で酸素消費速度が減少した。
以上より、マクロファージに発現するERαシグナルはリガンド依存的に細胞内代謝を介した免疫応答を活性化および滑膜マクロファージの減少を誘導し、関節炎病態増悪に寄与することが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでにmyeloid cell特異的ERα欠損マウス (cKO)を作出し、関節炎病態に関する表現型が雌でのみ認められている。また、一般的に女性ホルモンは抗炎症作用に寄与すると考えられていたため、当初cKOマウスの関節炎病態は悪化することが予想されたが、結果は逆に病態の抑制を示した。すなわち、マクロファージのERαを抑制することは新たな治療戦略になることが予想された。また、パラバイオーシスの結果より、関節炎病態に寄与するERαシグナルは末梢血由来マクロファージではなく、滑膜マクロファージに依存することを指示する結果が得られている。さらに、当初の予定よりも早くscRNA-seqを実施し、滑膜マクロファージのERαシグナルは細胞内代謝を制御する可能性を見出している。これらの結果から、当初予定にはなかった滑膜マクロファージのERαをターゲットとしたドラッグデリバリーの開発にも研究を展開している。以上より、進捗状況としては概ね順調であると言える。

今後の研究の推進方策

Controlマウス(ERaflox/flox およびLysMCre; ERαflox/+)とmyeloid cell特異的ERα欠損マウス (cKO, LysMCre; ERαflox/flox )において、滑膜マクロファージのサブポピュレーションの割合に変化がみられるか、Flow cytometryで解析する。また、ControlおよびcKOマウスから滑膜マクロファージのサブポピュレーションを採取し、ERαに対するChIP-seqあるいはメタボローム解析を実施して、滑膜マクロファージのERαシグナルが関節リウマチの病態性差に関わる詳細な分子メカニズムを明らかにする。加えて、滑膜マクロファージのサブポピュレーションをターゲットとした選択的エストロゲン分解薬(フルベストラントなど)内包リポソームの合成を試み、関節炎病態を抑制することができるか関節炎モデルマウスを用いて評価する。

次年度使用額が生じた理由

研究の進捗状況により、当初予定していた計画が次年度に持ち越しになったため。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] LIM1 contributes to the malignant potential of endometrial cancer2023

    • 著者名/発表者名
      Kato Hiroaki、Saeki Noritaka、Imai Matome、Onji Hiroshi、Yano Akiko、Yoshida Shuhei、Sakaue Tomohisa、Fujioka Toru、Sugiyama Takashi、Imai Yuuki
    • 雑誌名

      Frontiers in Oncology

      巻: 13 ページ: -

    • DOI

      10.3389/fonc.2023.1082441

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Isolation and Culture of Primary Synovial Macrophages and Fibroblasts from Murine Arthritis Tissue2023

    • 著者名/発表者名
      Saeki Noritaka、Imai Yuuki
    • 雑誌名

      Journal of Visualized Experiments

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.3791/65196

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Epigenetic regulator UHRF1 orchestrates proinflammatory gene expression in rheumatoid arthritis in a suppressive manner2022

    • 著者名/発表者名
      Saeki Noritaka、Inoue Kazuki、Ideta-Otsuka Maky、Watamori Kunihiko、Mizuki Shinichi、Takenaka Katsuto、Igarashi Katsuhide、Miura Hiromasa、Takeda Shu、Imai Yuuki
    • 雑誌名

      Journal of Clinical Investigation

      巻: 132 ページ: -

    • DOI

      10.1172/JCI150533

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 関節リウマチ病態に寄与するエピジェネティック制御因子の同定と新規治療標的としての可能性2023

    • 著者名/発表者名
      佐伯法学
    • 学会等名
      PRiME・PROS 第10回学術シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] Estrogen receptor-alpha promotes activation of synovium-resident macrophages in arthritis model mice.2022

    • 著者名/発表者名
      佐伯法学, 今井祐記
    • 学会等名
      プロテイン・アイランド2022国際シンポジウム
    • 国際学会
  • [学会発表] 滑膜線維芽細胞に発現するUHRF1はDNAメチル化を介して関節リウマチの多様な増悪因子を抑制する2022

    • 著者名/発表者名
      佐伯 法学, 井上 和樹, 大塚 まき, 渡森 一光, 水木 伸一, 竹中 克斗, 五十嵐勝秀, 三浦 裕正, 今井 祐記
    • 学会等名
      第40回日本骨代謝学会学術集会
  • [学会発表] 関節炎モデルマウスにおけるマクロファージの ERα 機能解析2022

    • 著者名/発表者名
      佐伯法学, 今井祐記
    • 学会等名
      第7回日本骨免疫学会
  • [学会発表] Stabilization of UHRF1 in synovial fibroblasts is a novel therapeutic strategy for rheumatoid arthritis.2022

    • 著者名/発表者名
      Noritaka Saeki, Kazuki Inoue, Maky Ideta-Otsuka, Kunihiko Watamori, Shinichi Mizuki, Katsuto Takenaka, Katsuhide Igarashi, Hiromasa Miura, Yuuki Imai
    • 学会等名
      European Calcified Tissue Society (ECTS) Congress 2022
    • 国際学会

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公開日: 2023-12-25  

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