研究課題
我々は、関節リウマチ病態に生じる性差をマクロファージのERαシグナルに着目して解析を進めている。これまでにmyeloid cell特異的ERα欠損マウス (ERαΔLysM)を用いて、①滑膜マクロファージに発現するERαは女性ホルモン依存的に関節炎病態を増悪すること、②ERαシグナルは細胞内代謝を介して活性化した滑膜マクロファージのアポトーシスを誘導することを明らかにしてきた。本年度は以下のことを明らかにした。ERαリガンドの17β-Estradiol(E2)は関節炎病態を抑制すると考えられている。卵巣摘出(OVX)を行い、E2ペレットを腹部皮下に包埋したところ、既報の如く関節炎はE2濃度依存的に抑制された。しかしながら、OVXマウスの後肢皮下にE2ペレットを包埋したところ、関節炎は有意に悪化することを明らかにした。このことから、E2は全身と局所で異なる作用があることが示唆された。E2はTestosteroneがAromataseで代謝されることで産生される。E2の大部分が卵巣で産生されるが、一部脂肪組織からも作られるため脂肪が局所でのE2のリソースとなる可能性がある。そこで、脂肪細胞特異的Aromatase欠損マウス (ERαΔaP2)を作出し、OVXを行った後に関節炎を誘導した。その結果、OVXの有無に関わらずERαΔaP2はERαflox/floxと比較して関節炎が有意に減少することが明らかとなった。以上より、研究期間全体を通して、関節局所の脂肪組織由来E2によって活性化された滑膜マクロファージのERαシグナルは細胞内代謝を介してアポトーシスを誘導し、関節炎病態増悪に寄与することが示唆された。
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