研究課題/領域番号 |
21K05976
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
細谷 実里奈 酪農学園大学, 獣医学群, 助教 (80848797)
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研究分担者 |
市居 修 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (60547769)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 卵子pick-up / 卵管 / 自己免疫疾患 / ヘッジホッグシグナル |
研究実績の概要 |
これまで我々は、排卵された胚を卵管内へ誘導できない卵管ロートの病態”pick-up障害”に、卵管の炎症および線毛上皮の恒常性の破綻が関与することを明らかにした。さらに、pick-up障害を呈する卵管ロートでヘッジホッグシグナル伝達経路(Hh経路)の減弱化がみられることを発見した。本研究では、免疫異常と卵管線毛上皮の形態異常を繋ぐ分子基盤としてHh経路に着眼する。 本年度は、pick-up障害を呈する自己免疫疾患モデルマウスMRL/MpJ-Faslpr/lpr(MRL/lpr)の卵管ロートにおいて、Hh経路の中枢分子であるPatched-1(Ptch1), Smoothened(Smo), Gli1/2/3の卵管ロート内蛋白局在およびmRNA発現量を解析した。結果、MRL/lprの卵管ロートでは、pick-up障害を呈する老齢時にPtch, Smo, Gli2の発現が有意に低下することが分かった。加えて、本分子のmRNA発現量は、卵管ロートの恒常性に関与するForkhead box protein J1(Foxj1)およびPaired box 8(Pax8)のmRNA発現量と有意な正の相関を示した。以上より、マウスにおいてHh経路に関与する分子の発現変化が、①卵管ロート上皮の恒常性と密接に関連すること、および②MRL/lprの卵管ロートにおける線毛上皮の形態異常およびpick-up障害に関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた卵管ロートにおけるHh経路関連分子の局在・発現解析まで進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
Hh経路の活性剤または阻害剤を卵巣嚢内に注入し、卵管ロート選択的Hh経路活性/阻害モデルを作製する。対照群と活性群/阻害群の卵管ロートで以下①~③の解析結果を比較する。①Hh経路中枢分子の細胞内局在を免疫染色で、Hh経路の標的遺伝子のmRNA発現量をqPCR法で明らかにし、Hh経路活性/阻害効果を確認する。②光学および走査型・透過型電子顕微鏡観察により、線毛上皮形態を精査する。③pick-up効率および卵管ロートex vivo培養系における線毛振動数と胚輸送距離を測定し、pick-up機能・線毛機能を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたデキサメタゾンの投与によるMRL/lprにおける自己免疫疾患治療モデルの作製を、引き続き行う必要があるため。
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