研究課題/領域番号 |
21K05990
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
川田 耕司 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (20374572)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 濾胞ヘルパーT細胞 / 免疫老化 / 腸内細菌叢 |
研究実績の概要 |
濾胞ヘルパーT細胞(Tfh細胞)は、抗体産生を制御するT細胞サブセットであり、自己免疫疾患モデルマウスの病態形成において重要な役割を担うことが報告されている。また、マウスでは加齢により、本細胞と類似した表現型を示すT細胞が増加することが報告されており、免疫老化の一つの特徴と考えられている。我々はこれまでに、TFH細胞および老化関連TFH様細胞の増加が、マウス由来腸内細菌種である Lactobacillus murinus により顕著に抑制される可能性を腸内細菌叢解析から見出しており、本年度はL. murinus生菌を投与した、ラクトース誘発亜急性老化モデルマウスおよび老化促進モデルマウスSAMP1における上記T細胞の挙動を検討した。 C57BL/6J マウスにD-ガラクトース100 mg/kg/day を8週齢より3ヶ月間皮下投与することにより作製した老化モデルにおいて、脾臓におけるTfh様細胞の割合が対照群と比較して有意に増加する結果となり、正常老化マウスについて実施した解析結果と類似した結果となった。一方、D-ガラクトース投与と並行し、L. murinus生菌を3日ごとに2x10^8経口投与 したモデルでは、Tfh様細胞増加が顕著に抑制される結果となった。また、20週齢のSAMP1においても、本細胞の割合が対照として用いたSAMR1に対して有意に増加していたが、これらもL. murinus生菌投与によって強く抑制される結果となった。これらの結果より、老化に伴うTfh様細胞の増加は腸内細菌叢による影響を受け、L.murinusが抑制的作用を有していることが示された。Tfh様細胞の免疫老化への寄与は十分解明されていないため、抗体産生能の低下等、既知の免疫老化病態に対する本菌の作用についてさらなる検討が必要と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年2月13日に発生した福島県沖地震による動物実験施設の損壊の影響で、当該年度内の動物飼育、実験を制限せざるを得ない状況となったため、研究は当初計画より遅れている。年度末には復旧し、実験が従来通り可能となったため、次年度以降はより効率的に研究を実施し、成果につなげる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
老化に伴うTfh様細胞の増加に対し、L.murinusが抑制的作用を有していることが示されたため、今後は抗体産生能の低下、自己抗体の産生増加等の老化病態に対し、L.murinusが抑制効果を持つか否かについて検討を行う。また同時に全身性エリテマトーデス(SLE)モデルマウスであるMRL/lprやNZB/W F1等、自己免疫性疾患自然発症マウスに対してL.murinus 生菌を経口投与し、昨年度と同様の解析を行って、病態形成に関わるTfh細胞の増加が抑制されるかについて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年2月13日に発生した福島県沖地震による動物実験施設の損壊の影響で、当該年度内の動物飼育、実験を制限せざるを得ない状況となり、実験が当初計画より遅れたため次年度使用額が生じている。当該分は前年度に実施予定だった研究に使用し、翌年度分は研究計画通り実施する予定である。
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