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2021 年度 実施状況報告書

自己炎症性骨疾患モデル動物における新たな疼痛発現機構の解析と治療薬探索

研究課題

研究課題/領域番号 21K05991
研究機関東海大学

研究代表者

阿部 幸一郎  東海大学, 医学部, 准教授 (90294123)

研究分担者 吉川 正信  東海大学, 医学部, 准教授 (90276791)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード慢性再発性多発性骨髄炎 / 骨痛モデル / 骨破壊 / Srcファミリーキナーゼ / Fgr / 慢性疼痛
研究実績の概要

無菌性・非腫瘍性の骨・骨髄炎である慢性再発性多発性骨髄炎(Chronic recurrent multifocal osteomyelitis, 以下CRMOと略す)は、骨痛や骨破壊の病変によって診断される自己炎症性疾患である。CRMOにおいてはその原因についても未だ不明な点が多いが、症状である骨痛や骨破壊のみ化にズムについても未知な点が多い。我々は現在までに、疾患モデルであるAli18マウスの遺伝的解析とCRMO患者のゲノム解析で、共通してSrcファミリーのFgr遺伝子におけるミスセンス変異を報告した。本研究では、Ali18マウスを新しいCRMOの疼痛モデルとして確立し、さらに治療薬探索のスクリーニングに用いられるかを検討する。少数のAli18マウスを用いて予備的に疼痛試験を行ったところ、von Freyフィラメント試験で野生型に比較して有意な差が認められた。Ali18マウスでは、より細いフィラメントによる刺激に対する逃避反応の有意な増加が認められた。この結果より、Ali18マウスは非侵害性刺激に対する痛覚過敏(アロディニア)が認められた。今年度は、さらに熱性刺激やホルマリン試験をAli18マウスを用いて行って、種々の刺激に対る反応を解析した。その結果、野生型マウスと比較して有意な差は認められなかった。このような結果より、Ali18マウスでは、アロディニアが主な異常であり、その他の刺激に対しては異常は認められないことが明らかとなった。さらに、サンプル数を増やして解析するため、Ali18マウスの体外受精を行って多数のヘテロマウスを得ることにより、Fgrの阻害剤を投与し疼痛が抑えられるかについて実験を行っている。このような阻害剤によって疼痛が抑えられれば、CRMOの骨痛の治療薬探索のツールとしての可能性が期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

実験計画では、疼痛試験を行うとともに、Ali18マウスの感覚神経線維を組織学的に解析することになっている。これについては、既に確立されたFgrレポーター系統を用いることになっている。そのため、Ali18マウスとレポーター系統との交配を行っている。Ali18マウスの表現型は遺伝的背景によって、強弱が変化することが知られているので、何回かAli18マウスで戻し交配を行う必要がある。そのため、現在までに必要とされるマウスが得られてないことから、組織学的解析が遅れている。また、ゲノム編集によりラットにAli18と同じFgr変異を導入することも計画していたが、これについては、先端モデル動物支援プラットフォーム(AdAMS)にエントリーしたが採択されなかったので、他の可能性も含めて改めて検討する予定である。

今後の研究の推進方策

疼痛試験においては、どのような刺激に対する異常かがはっきりしたので、標的となる神経がある程度絞れることが考えられる。また、Fgrを含むSrcファミリーの阻害剤であるダサチニブが、Ali18マウスの自己炎症と骨密度低下を抑えることが明らかになったので、この阻害剤がアロディニアに対しても効果的かどうかを解析している。自己炎症が抑えられることが明らかであるので、疼痛も関連している可能性が高い。また、組織学的解析により、骨と骨髄の抹消神経で発現するCGRP(calcitonin gene-related peptide) の発現の解析を行う。CGRPの関与が明らかとなれば、片頭痛の治療薬としてCGRPのモノクローナル抗体が製品化されているので、これによってCRMOの骨痛の治療が可能となる可能性が考えれる。しかし、その場合には、CGRPの機能喪失変異マウスをゲノム編集によって作出し、Ali18マウスとの二重変異マウスの解析を行う可能性も考えられる。

次年度使用額が生じた理由

今年度は、疼痛試験に用いるマウスに関して、繁殖が計画より少なかったために一部が保留となった。また、組織学的解析に用いる二重変異マウスの準備が遅れたために、免疫学的解析に用いる種々の抗体などの試薬や基質等の物品の購入を保留したために使用額が計画よりも減少した。特にマウス系統が不妊でないことは確認しているので、交配のペア数を増やすことを計画し、既に開始している。このことにより目的とした遺伝子型のマウスが得られる可能性は高く、今後の実験計画に問題はないと考えられる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Helmholtz Zentrum Muenchen(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      Helmholtz Zentrum Muenchen
  • [雑誌論文] The multi-kinase inhibitor dasatinib suppresses autoinflammation and increases bone density in a mouse model for chronic recurrent multifocal osteomyelitis2021

    • 著者名/発表者名
      Yoshikawa, R., Abe, K.
    • 雑誌名

      Cell Biochem Funct.

      巻: 39 ページ: 521-527

    • DOI

      10.1002/cbf.3617

    • 査読あり
  • [備考] 東海大学 医学部分子生命科学 阿部研究室

    • URL

      http://abe.med.u-tokai.ac.jp/index.html

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公開日: 2022-12-28  

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