研究課題/領域番号 |
21K05997
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
堀田 範子 (平島) 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 研究員 (00815649)
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研究分担者 |
三好 千香 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 助教 (60613437)
船戸 弘正 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 客員教授 (90363118)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 睡眠 / 脳波・筋電図 / 性成熟前マウス / 発育環境 / 運動 / 過眠 / 睡眠障害 |
研究実績の概要 |
携帯電話などによる夜間の光刺激等増加によって、未成年における睡眠障害が社会問題になりつつある。睡眠障害は、成長後の肥満や糖尿病など慢性疾患の増加に関与することから、要因の解析と対策が急務である。実験動物を用いた睡眠研究は、マウスにおいて盛んに行われている。しかしながら、ヒトの未成年に相当する性成熟前マウスの詳細な睡眠研究は、技術的制約によって短時間の急性実験の系に限られていた。同一個体における継続的な睡眠測定が行われておらず、睡眠の総時間や持続時間、睡眠覚醒サイクルや脳波成分等の成熟過程の評価は行われてこなかった。さらに、これらのパラメーターに異常が見られる睡眠異常マウスの発症過程を詳細に解明することは困難であった。 研究代表者らは、これまで離乳前の幼若マウスへの電極埋め込み手術および若齢期から成熟期までの継続した睡眠測定を成功させ、成長過程における脳波・筋電図測定の手法を確立している。本研究では睡眠障害、なかでも睡眠覚醒リズム障害と過眠症に着目して、性成熟前のマウス飼育環境を設定し、睡眠の成熟過程に必要な要素の検討を行うとともに、性成熟後の睡眠覚醒や代謝等に影響を及ぼし続ける環境要素を解明することを目指した。 初年度は、通常の飼育環境に対して、運動できる環境(睡眠に良好な環境を想定)と、明暗サイクルのない環境(光刺激が要因の睡眠覚醒リズム障害を想定)下で飼育を行い、青年期(10週齢前後)での睡眠覚醒(脳波・筋電図)測定を開始した。また、中年期(30週齢以上)での脳波・筋電図測定も順次開始しており、今後老年期(60週齢以上)の測定を計画している。 設定した環境下の睡眠覚醒および、通常の飼育環境に戻した後の睡眠覚醒パターン解析や、体重、糖尿病の指標になるブドウ糖負荷試験(GTT)の測定・解析の結果、環境要因が睡眠覚醒・体重・GTTへ影響を及ぼすことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、生殖能力を失った老年期まで実験計画に入っている関係上、短期間で結果が得られる青年期の個体群の実験と、長期的飼育を要する中年期・老年期に実験を行う個体群の飼育を並行して行っている。青年期と中年期の個体群の一部の脳波・筋電図や体重、GTT測定の結果を踏まえて、現在、性成熟前の脳波・筋電図測定の準備をしている。
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今後の研究の推進方策 |
1:睡眠覚醒リズム障害を想定した実験 睡眠に影響を及ぼすと想定された飼育環境の、「運動できる環境」と「明暗サイクルのない環境」は、当初の計画では独立して行う予定であったが、睡眠覚醒・体重・GTTへの影響の強さから、組み合わせることで比較検討することとした。つまり、睡眠覚醒へプラスに働く要因の「運動できる環境」と、マイナスに働く要因の「明暗サイクルがない環境」を同時に設定し、対照群と比較することで「運動」と「明暗サイクル」の影響を比較する。さらに、これらの環境下で、青年期・中年期における睡眠覚醒・GTTの追加測定を行うとともに、老年期の測定のために長期飼育している個体群での継続的体重測定および睡眠覚醒・GTTの測定を行う。 2:保護者の生活リズム異常による過眠症を想定した実験 遺伝的に過眠になる母マウスから産まれた野生型同腹仔と、野生型母マウスから産まれた野生型仔マウスの離乳直後の睡眠覚醒を比較する。母マウスから離乳可能な最短(3週齢)と最長(5週齢)のタイミングで睡眠測定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
CIVID-19のため、当初予定していた実験を繰り越すこととしたため。
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