研究実績の概要 |
近年、うつ病患者の増加が社会問題となっているが、現在の主なうつ病治療薬であるSelective serotonin reuptake inhibitors (SSRI)では、投薬期間として2~4週間も必要であり、しかも、効果のない症例が半数以上にも及ぶ。そこで、新たな抗うつ薬の開発が急務となっているが、その病態メカニズムの解析は未だ十分ではない。 その理由の一つとして、ヒトでのうつ病罹患率は男性より女性の方が2倍程度高いが、雌を用いたうつ病モデル動物は最適なものが確立されていないことが挙げられる。そこで、本研究課題において、雌マウスを用いた新たなうつ病モデルを開発し、その病態メカニズムを解析する。 研究代表者らは、雄の慢性社会的敗北ストレス負荷うつ病モデルマウスを用いた実験により、新たなうつ病の病態機序とその病態に寄与する鍵分子Proprotein convertase subtilisin/kexin type5 (Pcsk5) を見出した(Ito et al., Neuropsychopharmacology, 2021)。これらの病態において性差が存在するのか検証する際にも最適な雌のうつ病モデルの開発が必須となる。 研究代表者らは本研究課題によって、慢性社会的敗北ストレスを用いた新たな雌のうつ病モデル作製方法を検証した。その結果として、効果的にうつ病様症状を示す周産期うつ病モデル雌マウスの作製方法を確立した(Ito et al., Brain Research, 2024)。また、得られた新規周産期うつ病モデル雌マウスにおいて血中のストレスホルモン(corticosterone)が増加していることを確認した。
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