研究実績の概要 |
我々は、遺伝子は無いのに遺伝子トラップクローン(TC)が集積している領域を発見し、TCAA (Trap Clone Accumulated Area)と名付けた。本課題の申請において、TCAAの生理機能を推定するために、過去の実験で得たマウスES細胞におけるRNA-Seq, ATAC-Seq及びOct4-ChIP-SeqのデータをUCSC Genome Browser (mm9)に登録し、Chr.1, 4, 7, 11, 18, Xについて解析していた。 本研究期間中に、情報量の少ないY染色体を除いた残りのすべての染色体についてTCAAの探索を行い、1104個のTCAAを同定した。平均すると、1 Mbpあたり0.41個のTCAAが存在することになる。対照群として、遺伝子もTCもない領域(C1及びC11)、既知遺伝子を含む領域(G1及びG11)、ES細胞の多能性維持に関与していると考えられている遺伝子を含む領域(GP)についても併せて解析した。その結果、TCAAは染色体全体において、有意に発現していること、クロマチンがオープンになっていること、及びES細胞の多能性維持に重要な働きをしている可能性があることを示すことができた。 さらに公開エピゲノム情報(H3K4me1, H3K4me3, H3K9me3, H3K36me3, H3K27ac)を解析し、エンハンサー活性とリンクしているH3K4me1及びH3K27acについて、TCAAはC1&11だけでなくG1&11よりも有意に高く、GPと同程度のシグナルを示していることが分かった。 最後に、ES細胞におけるSuper-Enhancer (SE)の位置とTCAAの関係を調べたところ、231個のSEのうち、120個(51.9%)がTCAAとオーバーラップしていた。このことは、ES細胞におけるTCAAの重要性を示唆している。
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