研究課題/領域番号 |
21K06000
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
舟崎 慎太郎 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 特定事業研究員 (70794452)
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研究分担者 |
馬場 理也 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 准教授 (10347304)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 転座型腎癌 / PRCC-TFE3 |
研究実績の概要 |
Xp11.2転座型腎細癌は転写因子TFE3の融合によるキメラ遺伝子(TFE3キメラ)によって引き起こされる、組織学的にユニークな腎細胞癌である。融合したTFE3キメラタンパクが転写機能を亢進することが癌の進展に関与すると考えられるが、そのメカニズムは明らかになっていない。我々の作製したTFE3キメラを腎臓に発現させたXp11.2転座型腎細胞癌マウスモデル(PRCC-TFE3マウス)では、 TFE3キメラによる低酸素応答経路の活性化が発癌や腫瘍増殖に関与すると考えられる。昨年度よりTFE3キメラの発現が直接低酸素応答因子HIF1を直接制御することが明らかとなり、引き続きそのメカニズムに関する解析を行った。 Xp11.2転座型腎細胞癌マウスモデルにおいて、HIF1aノックアウトによって腎癌が抑制されることから、TFE3キメラによるHIF1aの発現上昇は腎癌に関するシグナルを亢進することが示唆される。この腎臓を用いて、HIF1a KOによって変動する遺伝子発現差解析とメタボローム解析をおこなった。特徴的な経路としてケトン体代謝経路に関連する遺伝子群がPRCC-TFE3マウス腎臓にてHIF1aにより制御されうることがわかった。ケトン体は細胞内にて脂肪酸代謝経路のアセチルCoAから代謝されることで知られる。Xp11.2転座型腎細胞癌マウスモデルではケトン体の産生が顕著に減少していることがわかった。詳細な遺伝子データから、実際にPRCC-TFE3はHIF1aの発現上昇を介し、SREBP1を亢進させ、脂質合成経路を制御するメカニズムがあることがわかった。このことから、PRCC-TFE3による脂質合成が亢進し、X11.2転座型腎細胞癌マウスモデルの癌の進展に重要な役割を持つと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Xp11.2転座型腎細胞癌マウスの腎臓サンプルを用いた遺伝子発現およびメタボローム解析から、ケトン体の産生の違いが明らかになり、その結果脂質合成経路の亢進が転座型腎癌の進展に関わる可能性が見出された。このことは計画通りの結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
PRCC-TFE3患者より樹立された転座腎細胞やヒト腎近位尿細管上皮細胞株HK2を用いた解析でも、PRCC-TFE3/HIF1a/SREBP1を介する脂質合成経路の亢進は生じている。このことは、PRCC-TFE3が細胞のシステミックな代謝変化を介して脂質産生へとシフトしていると考える。この変化に関して、細胞株を用いた代謝Flux解析へと進めることを計画している。さらに、脂質合成の亢進がどのように癌の進展へと寄与するかについては転座腎細胞を用いた移植実験や、PRCC-TFE3マウスの脂質の測定などからそのin vivoでの役割について詳細を明らかにしていく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度開始予定のマウスを用いた実験を来年度にくりこしたため。 移植に関する実験の開始時期が来年度になったため。
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