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2022 年度 実施状況報告書

細胞選択的モデルが紐解くNAFLD/NASHに対するユビキチンプロテアーゼの役割

研究課題

研究課題/領域番号 21K06001
研究機関酪農学園大学

研究代表者

北村 浩  酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (80312403)

研究分担者 岡村 匡史  国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 実験動物管理室長 (00333790)
江口 暁子  三重大学, 医学系研究科, 特任准教授(研究担当) (00598980)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードユビキチン / USP / USP2 / NASH / NAFLD / 骨格筋 / メタボリックシンドローム / 筋萎縮
研究実績の概要

1)前年までに筋選択的Usp2ノックアウト(KO)マウスにメチオニン・コリン欠損高脂肪餌(CDAHFD)を給餌したときに、骨格筋で発現が増加する分子Xを見出した。この分子はミトコンドリアの新生に関わることからUsp2遺伝子の欠損を代償する可能性を考えた。そこでX遺伝子のKOマウスを入手し、戻し交配を繰り返すことで、C57BL/6バックグラウンドのX遺伝子KOマウスを作成した。更にUsp2KOマウスと交配することでXとUsp2を双方欠損するX・Usp2 dKOマウスを樹立した。現在、X・Usp2 dKOマウスにCDAHFDを給餌し、表現型解析を進めている。また培養筋細胞を用いて、XとUSP2の関係を調べたところ、Xタンパク質はUsp2遺伝子の発現を変動させることを見出した。Usp2KOマウスの骨格筋でのX遺伝子の発現増加はUsp2の誘導を促すフィードバック制御であることが示唆された。
2)前年度にUsp2KOマウスにCDAHFDを給餌し、10週間後には骨格筋の有意な異常(形態学的変化・握力)は認められなかったため、給餌期間を1ヵ月に短縮した。体重や摂餌量などに大きな変化は見られなかったが、短時間絶食時の血糖値や握力が野生型と比べ有意差が認められた。
3)CDAHFD給餌2、4,10週間後に骨格筋(ヒラメ筋、腓腹筋)や肝臓で遺伝子発現が変動するUSPを網羅的なqRT-PCR法で探索し、複数見出した。
4)ヒトのNAFLD/NASHの場合、多くが2型糖尿病を併発することから、Usp2KOマウスに実験的に2型糖尿病を誘発した。予備的知見ではあるが、骨格筋で酸化ストレスの蓄積がみられた。
5) USP2の化学阻害剤を視床下部腹内側核に投与した場合、血糖値が上昇するが、これが腹内側核ニューロンの活性酸素の蓄積とそれに伴う交感神経の活性化により肝臓でのグリコーゲン分解によることを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1)CDAHFD長期給餌後、Usp2KOマウスでは顕著な骨格筋の形態機能学的な変化が認められなかったが、この時、代償的に誘導される遺伝子Xを見出し、遺伝子XとUsp2遺伝子を双方欠損するマウスの作出までできたので、予定以上の進捗がみられた。
2)短時間のCDAHFD給餌で野生型でみられない変化がUsp2KOマウスの肝臓や骨格筋で認められたことから、NASH時の肝臓に加えて骨格筋の機能におけるUSP2の役割を明らかにするという本課題の目的の答えとなる知見が得られた。
3)CDAHFDモデルでは肝臓の中性脂肪の蓄積は顕著であるが、肥満・インスリン感受性の変化などヒトのNAFLD/NASHでみられる変化が認められない。そこでよりヒトのNAFLD/NASH患者の病態に近い2型糖尿病モデルを用いた検討を実施したところ、USP2が病態に関わることを示す予備的知見を得た。このことはヒトNAFLD/NASH患者の肝・筋機能異常の進行決定分子としてのUSP2の役割を示唆するものである。
4)NAFLD/NASHモデルで骨格筋・肝臓での機能異常に対するUSP2の役割は明らかにされつつあるが、肝-筋及び筋-肝クロストークは依然明確でない。
5) USP2の化学阻害剤を視床下部腹内側核に投与した場合、血糖値が上昇するが、これが腹内側核ニューロンの活性酸素の蓄積を促すことを明らかにした。更に蓄積した酸化ストレスが腹内側核ニューロンAMPKのリン酸化を進めることで交感神経を活性化し、肝臓でのグリコーゲン分解を促すことも見出した。このような視床下部のUSP2による血糖調節機構を解明した。

今後の研究の推進方策

1)Usp2KOマウスでは1ヵ月間といった短期のCDAHFD給餌で空腹時の血糖値と前肢の筋力で変化が認められたことから、これらの臓器に機能変化を担う分子を探索する。特に肝臓での糖新生酵素をUSP2が遺伝子発現レベルで制御するという報告があることから、これらのの遺伝子発現や酵素活性の変化が血糖値に与える効果を調べる。またトランスクリプトミクスから骨格筋の機能低下に関わる肝由来分子を探索し、肝-筋クロストークを明らかにする。
2)X・Usp2 dKOマウスにCDAHFDを与えたときに、X KOマウスと比べ、肝臓の形態および機能(形態像、遺伝子発現、糖代謝酵素の発現、伊東細胞・肝細胞・免疫細胞数)と骨格筋の形態及び機能(握力、筋線維組成、ミトコンドリアの形態、酸素消費)について調べる。
3)2型糖尿病を誘発した筋選択的Usp2KOマウスで見出された筋機能異常の再現実験を進める。これまでに培養筋芽細胞のUsp2の欠損は酸化ストレスの蓄積が認められることを報告したが、糖尿病処置した成熟筋細胞における酸化ストレスの程度を野生型マウス、筋選択的Usp2KOマウスで比較する。さらに活性酸素の蓄積が、活性酸素除去系の不全なのか、活性酸素産生系の活性化なのかを明らかにする。またマイオカインの発現レベルを調べることで筋-肝クロストークへの影響を調べる。
4)CDAHFD給餌で肝臓や骨格筋で発現変動するUSPのKOマウスをCRISPR/Cas9法で作成する。
5)NAFLD/NASHの進行と関連する血糖値調節に視床下部USP2が関与することを明らかにできた。

次年度使用額が生じた理由

1)機関におけるマウス飼育・実験施設の移動があり実験計画の一部が進められなかった。
2)当初予定していなかった系統の解析が入ったことから、その予備試験に時間を費やし、本試験で使用すべき時間が限定された。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Ubiquitin-Specific Proteases (USPs) and Metabolic Disorders2023

    • 著者名/発表者名
      Kitamura Hiroshi
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 24 ページ: 3219~3219

    • DOI

      10.3390/ijms24043219

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Application of the colorimetric loop-mediated isothermal amplification (LAMP) technique for genotyping <i>Cre</i>-driver mice2022

    • 著者名/発表者名
      FUJIMOTO Masaki、KITAMURA Hiroshi
    • 雑誌名

      Journal of Veterinary Medical Science

      巻: 84 ページ: 507~510

    • DOI

      10.1292/jvms.21-0658

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Ubiquitin-Specific Protease 2 in the Ventromedial Hypothalamus Modifies Blood Glucose Levels by Controlling Sympathetic Nervous Activation2022

    • 著者名/発表者名
      Hashimoto Mayuko、Fujimoto Masaki、Konno Kohtarou、Lee Ming-Liang、Yamada Yui、Yamashita Koya、Toda Chitoku、Tomura Michio、Watanabe Masahiko、Inanami Osamu、Kitamura Hiroshi
    • 雑誌名

      The Journal of Neuroscience

      巻: 42 ページ: 4607~4618

    • DOI

      10.1523/JNEUROSCI.2504-21.2022

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Association of lithocholic acid with skeletal muscle hypertrophy through TGR5-IGF-1 and skeletal muscle mass in cultured mouse myotubes, chronic liver disease rats and humans2022

    • 著者名/発表者名
      Tamai Yasuyuki、Eguchi Akiko、Shigefuku Ryuta、Kitamura Hiroshi、Tempaku Mina、Sugimoto Ryosuke、Kobayashi Yoshinao、Iwasa Motoh、Takei Yoshiyuki、Nakagawa Hayato
    • 雑誌名

      eLife

      巻: 11 ページ: e80638

    • DOI

      10.7554/eLife.80638

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 視床下部腹内側核のUSP2による血糖値の調節とその仕組み2022

    • 著者名/発表者名
      藤本政毅、橋本茉由子、今野幸太郎、戸田知得、渡辺雅彦、北村 浩
    • 学会等名
      第31回日本病態生理学会大会
  • [学会発表] 視床下部のユビキチン特異的プロテアーゼ2による血糖値維持機構2022

    • 著者名/発表者名
      藤本政毅、橋本茉由子、今野幸太郎、李 明亮、山田柚衣、山下晃矢、戸田知得、戸村道夫、渡辺雅彦、稲波 修、北村 浩
    • 学会等名
      第165回日本獣医学会・日本実験動物医学会
  • [学会発表] 視床下部腹内側核のUSP2による血糖値維持における役割とその機序2022

    • 著者名/発表者名
      藤本政毅、橋本茉由子、北村 浩
    • 学会等名
      第18回HALAS学術集会
  • [学会発表] マクロファージのUSP2による凍結精子の活性維持2022

    • 著者名/発表者名
      橋本茉由子、北村 浩
    • 学会等名
      第18回HALAS学術集会
  • [学会発表] 精巣マクロファージに発現するUSP2による精子運動機能の制御2022

    • 著者名/発表者名
      北村 浩、橋本茉由子、木村俊介、渡邊敬文、高橋英機、永野昌志
    • 学会等名
      第30回日本病態生理学会大会
  • [備考] 北村浩教授ら研究成果を発表 ~血糖値を調節する脳の酵素を発見~(酪農学園大学プレスリリース)

    • URL

      https://www.rakuno.ac.jp/archives/21814.html

  • [備考] 血糖値安定 脳内酵素に鍵 酪農学園大など発見 糖尿病治療 応用に期待(北海道新聞朝刊)

    • URL

      https://www.hokkaido-np.co.jp/article/681556?rct=n_hokkaido&fbclid=IwAR32lVDETmyf0lQ2BIYMrXA340I9BhnFmK9iIDOj1Xn-Jhl272bjYwM6n1M

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公開日: 2023-12-25  

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