研究課題/領域番号 |
21K06004
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
中村 紳一朗 麻布大学, 獣医学部, 教授 (50307980)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 子宮内膜症 / 疾患モデル動物 |
研究実績の概要 |
主な実験の概要は、1)マウスに霊長類の月経様性周期を惹起する、2)カニクイザルの子宮内膜組織と免疫細胞を免疫不全マウスの腹腔内で生着させる、3)両者をあわせて月経様周期に伴い腹腔内のカニクイザル由来子宮内膜組織が挙動し、それに対しカニクイザル由来の免疫細胞が反応するモデルと構築する、ことである。2)においては、a) 近交系マウス同系統移植、b) 近交系マウスをドナー・免疫不全マウスをレシピエントとする異系統同種移植、c) ラットをドナー・免疫不全マウスをレシピエントの異種移植、d) カニクイザルをドナー・免疫不全マウスをレシピエントの異種移植、と段階的にドナー・レシピエントの種差を広げていく。1)ではプログラムインフュージョンポンプから分泌されるホルモン濃度に応じ、血中ホルモン濃度が変動することがELISAで確認できたが、ポンプの電池が2週程度しか持続しないことがわかり、マウス1個体に月経様ホルモン挙動を再現するためには、途中でポンプを交換する手術が必要となった。2)の実験はa)とb)の実験が完了し、病理組織学的解析によって卵巣あるいは子宮周囲の脂肪組織に、移植されたドナー由来の子宮内膜組織が生着する傾向にあることが確認できた。抗CD10抗体によって、移植ドナー細胞の生着を的確に判断する方法も確立できた。現在、c)の実験を行っており、病理組織学的解析によってドナー由来の子宮内膜組織の存在を確認する予定である。d)については、1頭の個体から一定期間を空けながら繰り返し腹腔内視鏡を用い子宮内膜組織の採取、骨髄穿刺ニードルを用い骨髄を採取する手法が確立できた。令和5年度に、d)で得られたカニクイザル由来ドナー細胞の移植実験を行う予定である。その後、1)と2)ーd)を同時に施術する3)を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度から大学施設利用あるいは実験協力者である研究室の所属学生の出校規制がほぼなくなり、予定されていた実験を実施している。しかし1年目の令和3年度の影響、すなわち大学施設の使用制限、学生が出校できないこと、さらにサル価格の高騰と入手の困難さから、全体に進行が遅延している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
この項でも、「5.研究実績の概要」に記載した実験番号を用いて説明する。1)においては、プログラムインフュージョンポンプを2週間埋設後、別のポンプに交換、埋設し、2つのポンプが連動する形でヒト月経の1〜2週と3〜4週を模倣する実験を確立する。定期的に採血を行い、ELISAにて血中のエストラジオール値を計測する。2)の実験で、c) ラットをドナー・免疫不全マウスをレシピエントの異種移植の実験においては、病理組織学的解析が不十分であるため、移植組織の生着を証明するための免疫染色を行う。d) カニクイザルをドナー・免疫不全マウスをレシピエントの異種移植の実験においては、引き続き滋賀医科大学動物生命科学研究センターで飼育されている子宮内膜症罹患カニクイザルから子宮内膜組織と骨髄組織を採取する。滋賀医科大学から麻布大学への移動で、生存細胞数が減少するため、メディウムの組成を再考する。カニクイザル由来細胞を免疫不全マウスに移植するだけの実験を行い、子宮内膜組織および免疫細胞の生着を病理組織学的に解析、またフローサイトメトリーにて、血液中の免疫細胞がどのような細胞種であるか、表現型の解析を行う。移植単独の実験が確立できたら、1)と2)ーd)を同時に施術する3)を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に行う実験が、学生の定期試験と重なったため行うことができず、必要な物品を購入する予算を執行しなかった。そのために残額が生じた。年度が改まり実験を再開し、使用する計画である。
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