研究課題
本研究は、ゲノム上に存在する正常な形状ではないDNAである「非B型DNA」に注目し、その解析を行っている。非B型DNAは、ゲノムの不安定性を引き起こす要因と考えられている。本研究課題では、非B型DNAの種類、存在する場所、生成のメカニズム、細胞がどのようにゲノム不安定性に対応しているかなど、諸点を明らかにすることを目的としている。ゲノム維持機構に必須な因子である「Smc5/6複合体」を端緒とした研究がうまく進展し、成果を上げることができた。出芽酵母ゲノム上のSmc5/6結合プロファイルを再現する数理モデルを構築することにより、Smc5/6の結合を誘起する複数要因を同定した。同定された要因は、転写に起因するDNAの正の超らせんの蓄積がSmc5/6結合と関係することを示唆していた。この推察を実験的に検証することにも成功した。また、精製したSmc5/6複合体が試験管内で正の超らせん状態のDNAに選択的に結合し、「ループ押し出し」活性を表すことを示すこともできた(以上、スウェーデン・カロリンスカ研究所のBjorkegren教授らとの共同研究)。正の超らせん状態にあるゲノム領域はゲノム不安定性の原因となること、Smc5/6複合体は正の超らせん状態をゲノムの特定領域に閉じ込めるよう機能していること、が示唆された。別のモデル生物である分裂酵母においてSmc5/6結合プロファイルを取得し、それを説明する数理モデリングを構築することにも着手した。分裂酵母においても転写によって生成される正の超らせん状態がSmc5/6結合を誘起する主たる要因と考えられることがわかった。正の超らせんDNAを認識するという性質は生物種を超えた普遍的なものであると考えられた。
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Molecular Cell
巻: 84 ページ: 867-882.e5
10.1016/j.molcel.2024.01.005
https://www.iqb.u-tokyo.ac.jp/pressrelease/20240131/