研究課題/領域番号 |
21K06013
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中村 遼平 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (30756458)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | DNAメチル化 / 脊椎動物 / 初期胚 |
研究実績の概要 |
DNAのメチル化(特にシトシンのメチル化)は植物、菌類、動物に広く見られるエピジェネティック修飾の一つであるが、生物種によってその機能やゲノム上の分布が異なる。脊椎動物は遺伝子のプロモーターなどを除くほとんどのゲノム領域がメチル化を受けるglobalメチル化というメチル化パターンを持つ。このglobalメチル化は脊椎動物種に特有のメチル化パターンであるが、その機能は明らかになっていない。その原因としてはDNAメチル化を除去する実験が困難であったことなどが挙げられる。本研究では、メダカ受精卵においてDNAメチル化を完全に除去できる独自の実験系によって脊椎動物におけるglobalメチル化の機能を明らかにする。特に、発生初期胚においてDNAメチル化を除去した場合の転写やクロマチン状態への影響を記載する。さらに、globalメチル化が非コード領域をマスクすることで転写因子が不要な調節領域を活性化するのを防ぐという仮説を実験的に検証する。 まず、DNAメチル化が除去された場合にヒストン修飾がどのような影響を受けるかを検証した。ヒストンの修飾に対する抗体を用いてChIP-seqを行ったところ、ほぼ全ての修飾においてパターンに変化が見られたが、詳細な解析の結果、特にヒストンアセチル化が大きく影響を受けることがわかった。特に、異所的に生じるアセチル化領域からは新たに非コードRNAが転写されることも明らかになった。今後は、どのようなメカニズムでこのような修飾の変化が起きるのかを解明するための解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、DNAメチル化阻害胚において複数のヒストン修飾のChIP-seqを行い、変化が検出できた。 さらに、ヒストンアセチル化など、大規模に影響を受けている修飾を同定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
DNAメチル化によるヒストン修飾の変化がどのような分子メカニズムで起きているのかを明らかにするために、各修飾について変化したゲノム領域の配列的特徴などから、そのDNA配列に結合する候補転写因子を同定する。さらに、候補転写因子の阻害実験等により、メカニズムの検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりも実験条件の検討などが効率よく進み、使用する消耗品などが少なかったため。本年度では転写因子の機能阻害胚などにおけるエピゲノム解析を行う予定であり、本年度予算と共にシークエンス関連の消耗品および人件費に使用する。
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