近年、巨大ファージの単離法が確立され、前世紀にはほとんど報告されていなかった巨大ファージの単離報告が続いている。またメタゲノム解析からも超巨大ファージの遺伝情報が報告されている。これらの中には従来のファージでは考えられなかった遺伝子が含まれており、ウイルス学上の興味だけでなく、新たな遺伝情報資源としても期待されている。 ところが一般的なシークエンシング法では塩基配列を解析できない特殊なゲノムDNAを 有する巨大ファージを6株発見した。これらファージは植物病原菌ファージと腸内細菌ファ ージであり系統的にも大きく異なるにも関わらずそのゲノムDNAは様々な解析において類似の挙動を示した。このことから環境中には難読性ゲノムを持つ巨大ファージが予想よりも高頻度で存在すると考えられた。 予備実験として青枯病菌ファージRP13についてRNAseqを行い、得られた部分配列を元にプライマーを設計し、DNAを増幅可能な処理方法を検討した。この方法を用い、同じく青枯病菌ファージであるRP7と大腸菌ファージであるE4Uについて塩基配列の解読を行なった。RP7についてはRP13と高い相同性を確認した一方でE4Uは類似ファージが存在しない完全に新奇ファージであることが判明した。tail tube等の構造領域遺伝子数個についてのみ既知ファージとの類似性を示す遺伝子が存在したがゲノムのほとんどの領域において類似遺伝子は確認されなかった。 これら難読性ファージゲノムはDNase(特に制限酵素)に強い耐性を示すことから、環境DNAサンプルをDNaseで分解し、その後今回の方法塩基配列解析を行うことで、既存のメタゲノム解析でも見逃されてきた新たな遺伝情報が所得できると期待される。
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