研究課題
癌細胞で起こるmRNA再スプライシング現象をモデルにして、今まで未知だったmRNA前駆体のスプライシング完了機構を解明できた。スプライシング後のmRNAに結合するエクソン接合部複合体(EJC, Exon Junction Complex)が、成熟mRNAの再スプライシングを抑制している事実を証明した。実際に、中核3因子(eIF4A3, MAGOH, Y14/RBM8A)を正常細胞でノックダウンすると、正常細胞で本来起こらないmRNA再スプライシングが誘導できる。そのmRNA再スプライシング抑制のメカニズムを、エキシトロン(エクソン内の選択的イントロン)をモデルとして解析した。そのエキシトロンを除くスプライシング(以後エキシトロン・スプライシング)は、EJC中核3因子(eIF4A3, MAGOH, Y14/RBM8A)のノックダウンで促進するので、mRNA再スプライシングを再現できる系となる。以前に、成熟mRNAはEJCが、SRやhnRNP蛋白質を中心とする多くのRNA結合蛋白質の結合を誘導し、コンパクトなmRNA蛋白質複合体(mRNP)を形成することが知られていた。そこで、私たちはEJCが結合しないと成熟mRNAはコンパクト構造をとれなくなり、スプライシング複合体(スプライソソーム)の再形成を許してしまう、と予想した。HNRNPM遺伝子を使い、そのエキシトロンを含むエクソンと両端のイントロンから構成されるミニ・レポーター遺伝子を作成した。この両端のイントロンを取り除くと、エキシトロン・スプライシングが促進した。よって両端イントロンでのスプライシング完了に伴うEJC結合が、エキシトロン・スプライシングを抑制していることが示唆された。そこでエキシトロン両端にテザリングでEJC中核因子を結合させると、実際にエキシトロン・スプライシングの抑制を再現できた。EJCが誘導するmRNPのコンパクト構造が、スプライソソームの再形成を阻止し、mRNA再スプライシングの抑制を導いていることが明らかとなった。
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http://www.fujita-hu.ac.jp/~mayeda/