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2022 年度 実施状況報告書

間期染色体構築におけるコンデンシンIIからコヒーシンへの機能継承

研究課題

研究課題/領域番号 21K06027
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

小野 教夫  国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (20291172)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードコンデンシンII / コンデンシンI / コヒーシン / 染色体テリトリー / 染色体腕 / セントロメア / 間期
研究実績の概要

コンデンシンは分裂期染色体の構築に中心的な役割を果たすタンパク質複合体である。このうちコンデンシンIIは分裂期以外でも染色体に局在することから細胞周期を通じた役割が予想されている。本研究では昨年度に、コンデンシンIIが分裂期直後のG1期におけるセントロメアの配置と染色体テリトリーの形状と核内での放射状配置の確立に貢献することを明らかにした。今年度は、この過程でコンデンシンとコヒーシンがどのように働いているのかを明らかにするため、これらの局在変化と染色体形態変化を詳細に解析した。その結果、分裂期における染色体構築に中心的な役割を果たすコンデンシンIの除去も染色体テリトリーの形状と核内での放射状配置を部分的に乱すことが分かった。これは、分離が遅れた染色体は、他の染色体が構造変換を開始しても、コンデンシンII除去の場合と同様に棒状の染色体が残されることに起因すると思われた。この結果から、コンデンシンIIによる染色体構造変換が適切なタイミングでおこることが重要だと考えられた。一方、コヒーシンはG1期に入る前に染色体と結合を開始するが、コンデンシンIIを除去してもそのタイミングは変化しなかった。すなわち、コンデンシンIIによる染色体構造変換が起こる前でもコヒーシンは細胞周期のステージ特異的に染色体と結合できることが示された。コンデンシンI除去による染色体テリトリーの異常発生も含めると、分裂期から間期への適切な染色体構造変換はコンデンシンIIとコヒーシンが適切なタイミングで働くことが重要であることが強く示唆された。また、本年度は1Mb以下の染色体構造、すなわちクロマチンループ構造の変化、染色体の長腕と短腕の位置関係、そして染色体の腕内の構造をFISH法で検出する方法を確立した。これらは間期染色体のin situ での構造解析に有効であることが示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は細胞学的手法をもちいて、分裂期直後における染色体構造変換において、コンデンシンIIとコヒーシンがどのようなタイミングで働くのかを明らかにすることができた。また、FISH画像を定量的な解析に適用し、染色体形態変化をより客観的にとらえたデータも蓄積している。また、これまで分子レベルで解析されてきたクロマチンのループ構造の変化をFISHによりin situ で可視化することにも成功した。これはコヒーシンの機能解析に有効であるだけでなく、コンデンシンIIや他の因子が、このレベルの大きさのクロマチン構造にどのように、そしてどの場所で貢献するのかを解析するツールとなりうる。さらに、染色体の階層構造を、染色体の長腕と短腕の位置関係、そして染色体の腕内の構造に分けてその変化をFISHで可視化することに成功した。これは「コンデンシンIIからコヒーシンへの機能継承」が細胞周期のどの時期に、どのように起こるのかを解析する上で有効である。手法の確立にやや時間をとられたきらいはあるものの、重要な知見が得られたことも含め総合的に鑑みると概ね順調に進展していると判断される。

今後の研究の推進方策

これまでの結果から、分裂期直後の間期核内の染色体構造の確立において、コンデンシンIIとコヒーシンが適切なタイミングで働くことが重要であることが明らかになった。両者の機能継承の結果、適切なタイミングで変換された構造をもつ染色体の受け渡しが担保されると推察された。このように間期染色体構造の確立に対しては一定の答えが見出されたkとから、今後は一旦形成された間期核における染色体構造とテリトリーの維持にコンデンシンIIとコヒーシンがどのように貢献するのか解析を進める。これには、申請者が確立した、FISH法を基盤として画像解析を組み合わせた解析方法をもちいる。これによって、G1期で明らかにされたコンデンシンIIとコヒーシンの関係が間期の進行中に維持されるのか、あるいは変化するのかを明らかにすることができると考えている。これらの研究によって、間期核内の染色体構造の確立と維持におけるコンデンシンIIとコヒーシンの役割に対する理解を深め、細胞周期全体における間期染色体の構造の制御の位置付けに対して統合的なモデルを提唱したい。

次年度使用額が生じた理由

今年度の支出は主に、FISH関連試薬の購入に充てられた。単年度ではほぼ計画どおりであるが、初年度での未使用分があったために次年度使用額となった。また、学会がオンラインが多かったこともあり参加費や旅費が設定されないものがあったことも理由としてあげられる。翌年度分として請求する助成金には、FISH画像の定量的解析に係るPC関連機器や消耗品が多く含まれる予定であり、次年度請求額にはこれらの購入に含まれる予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 その他

すべて 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] コンデンシン II は分裂期直後のグローバルな染色体テリトリーの確立に貢献する2022

    • 著者名/発表者名
      小野教夫,高木昌俊, 平野達也
    • 学会等名
      染色体学会 第73回年会
  • [備考] 理化学研究所 平野染色体ダイナミクス研究室ホームページ

    • URL

      http://www2.riken.jp/chromdyna/

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公開日: 2023-12-25  

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