研究課題
ヒストンH4の高アセチル化は、正常な恒常性では精子形成に必須であり、精巣核蛋白(NUT)正中線癌(NMC)等の癌に見られることが知られている。BETタンパク質、例えばBRD4は、アセチルリジン結合タンパク質であり、神経膠芽腫を含む癌に関与する。BRD4はスーパーエンハンサー(SE)の転写活性化機能の確立に重要な役割を果たしているが、ブロモドメインを介した直接的なクロマチン結合標的はH3K27acではなく、K5とK8がアセチル化されたマルチアセチル化ヒストンH4(H4K5acK8ac)が代表である。しかし、エンハンサー制御因子におけるH4K5acK8acの寄与はよく分かっていない。ここでは、H4K5acK8acが機能的なSEの指標となり、SEランキングとして広く用いられているH3K27ac-enrichmentランキングでは見逃されるSEの検出に利用できることを示す。CRISPR-Cas9を介したH4K5acK8acに富むSEの欠失は、膠芽腫幹様細胞株においてMYCN、NFIC、HOXA7などの関連遺伝子の発現を低下させ、これらの細胞の幹細胞性を低下させた。以上のことから、本研究成果は、ヒストンH4のマルチアセチル化を介した細胞型特異性の制御に関与する遺伝子を同定する戦略を提示した。本研究で得られた知見は、H4K5acK8ac修飾に関与すると考えられるTIP60を標的としたメカニズム解明に貢献すると考えられる。今後、特にmESCにおいて、H4K5acK8acに富むエンハンサーやSEとの長距離相互作用や関連遺伝子転写への関与を解明するための研究を進める予定である。
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Epigenomes
巻: 7 ページ: 7
10.3390/epigenomes7010007
Cancers
巻: 14 ページ: 5404
10.3390/cancers14215404