研究課題/領域番号 |
21K06033
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
嶋田 睦 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (70391977)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 膜タンパク質 / 電子顕微鏡 / 脂質二重膜 |
研究実績の概要 |
今年度は研究代表者の開発した手法によって創薬上の重要性の高い3種類の新規のターゲット膜タンパク質からの脂質二重膜中での構造情報の取得を試みた。その結果、その全てについて構造情報の取得に成功した。これにより本手法の汎用性の高さを証明することができた。また新規のターゲット膜タンパク質に対し、本手法により作製した電子顕微鏡用グリッドからの電子線トモグラフィー法による構造情報取得にも成功した。これにより、本手法と電子線トモグラフィーを組み合わせた手法の技術開発も推進した。さらに電子顕微鏡像中に観察される脂質二重膜中の構造体が目的膜タンパク質であることを確認するための、本手法と金ナノ粒子による免疫染色手法を組み合わせた手法についても、種々の条件検討を行うことで推進した。また試料膜タンパク質濃度を適切に調整することにより、会合体形成がデータ取得に適切なように適度に抑制された電子顕微鏡像が取得できることも確認した。また本手法の国外での知的財産権保護のため、PCTに基づく国際出願を行った。さらに早期審査により、本手法について特許査定を受け、特許登録を行った。審査では20の請求項の全てについて一発特許査定を受けた。そのため考えられる最大の範囲をカバーする強い特許になったと考えている。一方、クライオ電子顕微鏡法によるデータ収集については、所属部局の装置の高度化に伴う、装置のメンテナンスの期間が想定外に長期間続いたことにより、測定時間を十分に確保できなかった。今後も装置の使用の制限が大きい状態が続く可能性があるため、今後は外部機関の装置の利用をより積極的に考慮する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、複数の新規ターゲットの膜タンパク質についての本手法による構造情報の取得を行い、本手法と電子線トモグラフィーを組み合わせた手法や、本手法と免疫染色を組み合わせた手法の開発を進めるなど、予定していた多くの実験を試み、それらに成功した。一方、クライオ電子顕微鏡によるデータ取得に関しては当初想定していなかった装置の高度化に伴う長期間のメンテナンス期間の問題により、十分な測定時間を確保できなかった。しかしその分、他の実験や特許取得などについて、想定以上の進捗が見られたため、総合的に判断し、区分を「おおむね順調に進展している。」とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は解析対象の膜タンパク質をさらに拡大し、本手法の汎用性、有効性の検討をさらに進める。既に3種類の新規ターゲットの膜タンパク質については精製試料を準備できており、適宜実験が開始できる状態にある。またこれらの試料に結合する医薬品試料も準備し、膜タンパク質と医薬品の複合体の構造情報の取得も試みる予定である。さらに本手法とトモグラフィーを組み合わせた手法や本手法と免疫染色を組み合わせた手法もさらに多くの膜タンパク質に適用し、これらの手法を洗練する。また適宜クライオ電子顕微鏡法を用いたより高分解能での解析を試みる。また本手法の知的財産権の保護に関し、海外の企業との本手法を用いた医薬品の共同開発を適切に推進するため、今後順次、PCTに基づく米国、欧州、中国等での国内移行を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は主に、学会発表やデータ測定のために予定していた「旅費」と、論文投稿料として予定していた「その他」の費用を使用しなかったために次年度使用額が生じた。この次年度使用額は、元の計画通りに次年度に予定を繰り下げ、学会発表やデータ測定のための「旅費」、また論文投稿料としての「その他」の費用として使用予定である。
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