今年度は研究代表者の開発した手法により、4種類の新規標的膜タンパク質についてデータ取得を試み、そのうち2種類の膜タンパク質についてのデータ取得に成功した。データ取得に成功しなかった膜タンパク質のうち1種類についても、当該膜タンパク質に結合する抗体医薬品を結合させた状態では、標的膜タンパク質と抗体の複合体の可能性がある像が得られたことから、標的膜タンパク質のサイズが小さいことにより、負染色像が不鮮明であったことが原因である可能性があると考えている。またもう1種類については、通常使用している中性リン脂質に加え、酸性リン脂質が脂質二重膜への組み込みに必要な膜タンパク質であったためだと考えている。これにより、研究期間に取得した新規膜タンパク質試料からのデータ取得数は合計8種類となり、この技術の汎用性の確認が大きく進展した。またモデル膜タンパク質を含め、これまでに所属機関でデータ収集を行なった標的膜タンパク質3種類については外注先企業によるデータ取得も実施し、負染色溶液の種類や使用する電子顕微鏡装置などの条件が異なる場合でも同様のデータが取得できることを確認し、データの再現性を検証できた。またクライオ電子顕微鏡による解析については、今年度は前年度までとは異なる2グループとの間で共同研究を推進した。その結果、1グループについては顕著な進捗が見られ、これにより本技術の確からしさについてはより確固たるものになった。本手法の海外での知的財産権の確保に関しては今年度、韓国、オーストラリアでも特許登録された。これにより今後海外の共同研究者や製薬企業との本技術を用いた共同研究を推進する準備も着実に進捗した。
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