研究課題/領域番号 |
21K06041
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
阿久津 誠人 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 有人宇宙技術部門, 主任研究開発員 (00785206)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 膜タンパク質 |
研究実績の概要 |
膜タンパク質の機能および構造についての研究は未だ限定的と言わざるを得ない。しかしながら、創薬ターゲットの半数以上が膜タンパク質であることからも、膜タンパク質の効率的な生産システムの確立と汎用性のある立体構造解析手法の確立が求められている。本研究では、創薬研究への利用をも見据えた膜タンパク質の調製および構造解析のための汎用性のある効率的な新技術の開発に取り組んだ。膜タンパク質の疎水的性質のために生じる凝集や不溶化を避けるために、リング状の親水性人工タンパク質を作成し、膜タンパク質をリング状の人工タンパク質の内側に発現させることで膜タンパク質を可溶性タンパク質と同様に水溶液中に調製することを目標とした。はじめに、リング状の人工タンパク質と標的タンパク質との融合タンパク質を作成した。クライオ電子顕微鏡を用いて、融合タンパク質の単粒子解析を行ったところ、融合タンパク質の状態でもこの人工タンパク質はリング状の構造を保つことができることを確認した。次に、リング状の人工タンパク質の内側に存在するアミノ酸をより疎水性に変更することで膜タンパク質を取り込むことができるように変異体の設計を行った。これまでに、変異体および変異体と標的タンパク質との融合タンパク質の発現および精製を完了することができた。さらに、様々な膜タンパク質との融合タンパク質の発現ベクターの設計を完了した。今後は、引き続きクライオ電子顕微鏡を用いて、変異体と標的タンパク質との融合タンパク質の単粒子解析を行うことで、標的膜タンパク質のリング状の親水性人工タンパク質変異体内部への取り込みを確認していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで、膜タンパク質の疎水的性質のために生じる凝集や不溶化を避けるために、リング状の親水性人工タンパク質を作成し、膜タンパク質をリング状の人工タンパク質の内側に発現させることで膜タンパク質を可溶性タンパク質と同様に水溶液中に調製することを試みた。リング状の人工タンパク質と標的タンパク質との融合タンパク質を作成することができた。クライオ電子顕微鏡を用いて、融合タンパク質の単粒子解析を行ったところ、融合タンパク質の状態でもこの人工タンパク質はリング状の構造を保つことができることを確認した。次に、リング状の人工タンパク質の内側に存在するアミノ酸をより疎水性に変更することで膜タンパク質を取り込むことができるように変異体の設計を行った。これまでに、変異体および変異体と標的タンパク質との融合タンパク質の発現および精製を完了することができた。さらに、様々な膜タンパク質との融合タンパク質の発現ベクターの設計を完了した。本年度の予定としては、これまでに設計した様々な膜タンパク質との融合タンパク質の発現及び精製を行い、その立体構造をクライオ電子顕微鏡を用いて解析することであったが、慶應義塾大学理工学部から宇宙航空研究開発機構 JAXAへと所属機関の変更があったことから、実験環境の再構築等に時間がかかり、今年度の研究はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、リング状の人工タンパク質と標的タンパク質との融合タンパク質を作成することができた。クライオ電子顕微鏡を用いて、融合タンパク質の単粒子解析を行ったところ、融合タンパク質の状態でもこの人工タンパク質はリング状の構造を保つことができることを確認した。次に、リング状の人工タンパク質の内側に存在するアミノ酸をより疎水性に変更することで膜タンパク質を取り込むことができるように変異体の設計を行い、変異体および変異体と標的タンパク質との融合タンパク質の発現および精製を完了することができた。さらに、様々な膜タンパク質との融合タンパク質の発現ベクターの設計を完了した。これまでに設計した様々な膜タンパク質との融合タンパク質の発現及び精製を行い、その立体構造をクライオ電子顕微鏡を用いて解析する予定であり、標的膜タンパク質のリング状の親水性人工タンパク質変異体内部への取り込みを確認していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は翌年度分の予算も前倒しで請求しており今年度で使い切る予定でいたが、研究機関の変更などの理由で、思ったよりも研究が進まず、次年度使用額が生じた。次年度使用額は生じたが、申請当初の予定額とは大きな隔たりはなく予定通り使用する。
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