研究課題/領域番号 |
21K06044
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
児玉 昌美 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (30512248)
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研究分担者 |
小川 治夫 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (40292726)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | グアニル酸シクラーゼ受容体 / ナトリウム利尿ペプチド |
研究実績の概要 |
グアニル酸シクラーゼ(GCase)受容体は、細胞外にリガンド結合(LB)ドメインを、細胞内にGCaseドメインを持ち、2量体として機能する。私たちはこれまでに、血圧・体液バランスの維持に不可欠なGC-A受容体について、LBドメインと心房型ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の複合体のX線結晶解析を行い、2量体LBドメインの中心にANP1分子が結合し、LBドメインを旋回させることを明らかにした。本研究は、旋回運動に主眼を置いてGCase受容体の①リガンドを認識する機構と②結合シグナルを膜内へ伝達し、GCaseを活性化する機構を明らかにすることを目的としている。 GC受容体のリガンドであるNPは共通の環状構造を有するが、GC-A受容体にはANPあるいは脳性NP(BNP)が、GC-B受容体にはC型NP(CNP)が結合する。基質選択性の異なるGC-B受容体のリガンド認識機構がGC-A受容体と同様か否かについては不明だったため、2021年度はクライオ電顕による単粒子解析によって、GC-A受容体のLBドメイン・ANP複合体およびGC-B受容体のLBドメイン・CNP複合体の構造を決定し、両者を比較した。その結果、GC-B受容体もGC-A受容体と同様、2量体LBドメインの中心にCNP1分子が結合するが、NPの環状構造の外側部分の認識がGC-A受容体とは異なるために基質選択性が担保されることを見出した。GC-A・ANP/BNP系は、急性心不全治療薬あるいは心不全等の診断法として既に広く臨床で利用されているが、今回得られた、受容体のリガンド認識機構についての知見は、より安全性が高く、有効な治療薬の開発に大いに資するものである。またGC-B・CNP系も軟骨代謝や末梢血管の拡張に関与することから、医学的重要性が極めて高く、今後の臨床応用研究の進展が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに私たちは、GC-A受容体のLBドメインとANPの複合体の構造を明らかにしたが、この時はX線結晶解析で行った。2量体受容体の中心にリガンドが配された構造を詳細に解くことは非常に難解で、独自の解決法によって克服したが、今回、GC-B受容体のLBドメイン複合体の構造解析にあたっては、GC-A受容体に比べて糖鎖修飾が多いためか、そもそも結晶を得られなかったため、クライオ電顕による単粒子解析を試みるに至った。解析においては、まずX線結晶解析の結果を基に、GC-A受容体のLBドメイン複合体のクライオ電顕・単粒子解析を行い、更にこれをコントロールにGC-B受容体のLBドメイン複合体の解析を行った。解析の結果、GC-A、GC-B受容体のリガンド認識機構の同異点が明らかになり、本研究の目的①の達成に向けて大いに前進した。よって本研究は「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、GC-B受容体のLBドメイン・CNP複合体の構造を明らかにした。これを基に考察したGC-B受容体の基質認識機構を、変異体CNPを用いた構造解析や二量体形成などのキネティックス解析により検証し、基質認識機構についての理解をさらに深めることで本研究の目的①を達成する。また一連の結果は、より早い段階で原著論文や学会を通じて公表するよう努める。 目的②のGC受容体が結合シグナルを膜内へ伝達し、GCaseを活性化する機構を明らかにするためには、全長GC受容体の構造解析が欠かせない。まず全長GC受容体の大量調整が可能な系とGCase活性を損なわずに純度の高い受容体を精製する方法を確立することが急務となる。 私たちがこれまでに行ったGC-A受容体のLBドメイン・変異型ANP複合体の構造解析では、LBドメインの旋回角度に異常が見つかっている。LBドメインの旋回運動とGCaseドメインの活性化の関連を理解するために、in vitroのみならずin vivoにおいてもGCase活性をモニターできる系を立ち上げ、構造解析と並行してGCase活性のキネティックス解析を行うことで、構造解析の結果の理解を助ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
in vivoにおいてもGCase活性をモニターできる系を立ち上げるため、cGMPのバイオセンサーを購入する予定でいたが、輸入に時間がかかり次年度に持ち越したため。
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