研究課題/領域番号 |
21K06045
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
沼本 修孝 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (20378582)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | X線結晶構造解析 / クライオ電子顕微鏡 / シグナル伝達 / 自己免疫疾患 / B細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、B細胞抑制性共受容体CD72と自己抗原Sm/RNPとの複合体の立体構造を決定し、その構造情報に基づき特異的な分子認識機構を解明する。研究初年度の2021年度は、以下の通り研究を実施した。 1. マウスCD72のリガンド結合ドメインとSm/RNPとの複合体の立体構造解析 マウス由来CD72アリルのCD72aについて、そのリガンド結合ドメイン(マウスCD72a-CTLD)を大量調製した。市販のSm/RNP試料を用いて、これをさらに高純度に精製した標品を調製し、マウスCD72a-CTLDと混合して複合体を形成させた。複合体について、負染色法による電子顕微鏡観察を行い、均一性が高いことを確認した。次いで、クライオ電子顕微鏡による単粒子解析を行い、10 A程度と低分解能ながらも、分子形状の特徴がわかる密度マップを得た。Sm/RNP試料単独でも単粒子解析を行い、両者の比較から、CD72a-CTLDの結合部位を推測することができた。 2. ヒト由来CD72のリガンド結合ドメイン調製法の検討 ヒト由来CD72の試料調製はこれまで難航していた。発現コンストラクトを見直し、N末端のタグ部位やC末端の配列について、すでに大量調製法が確立できているマウス由来CD72との差をなるべく少なくするよう配慮し、さらに長い挿入ループ部位を短絡するようなコンストラクトも含めて再設計した。リフォールディングの条件なども最適化を行った結果、均質で高純度の標品が得られるようになり、結晶化実験の結果、微結晶ではあるが再現よく結晶が得られるようになった。これにより、ヒト由来CD72のリガンド結合ドメイン単独での結晶構造解析も行える見通しとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的であるCD72とSm/RNPの複合体の構造解析について、クライオ電子顕微鏡による単粒子解析法が有用であることが明らかになった。マウスCD72a-CTLDとSm/RNPのいずれにおいても、構造解析可能な標品の調製法が確立できており、今後の高分解能化が期待できる。さらに、ヒト由来CD72-CTLDの調製にも目処が立ち、ヒト由来試料でのSm/RNPとの複合体構造解析も視野に入ってきた。 以上のように、本研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
研究二年目となる本年度は、当初計画通りマウスCD72a-CTLDとSm/RNPの複合体構造解析を主に行う。前年度の結果から、単粒子解析法を主に使用してさらなる高分解能化をはかる。ヒト由来CD72-CTLDの調製ができれば、これとSm/RNPの複合体構造解析を行うとともに、いまだ構造情報の無いヒト由来CD72-CTLDについて、単独での結晶構造解析も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の物品が値引きにより想定より安価に購入できたためであり、物品費に充当して使用する。
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