研究課題/領域番号 |
21K06048
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
有吉 眞理子 大阪大学, 生命機能研究科, 特任助教(常勤) (80437243)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 染色体分配 / キネトコア / セントロメア / クライオ電顕 / タンパク質複合体 |
研究実績の概要 |
染色体の均等分配は、染色体上のセントロメア領域に形成されるキネトコアと呼ばれる超分子構造体によって制御される。キネトコアは、2つの階層構造を持つ。細胞周期を通して、常にセントロメア領域に会合している構成的セントロメア局在ネットワークタンパク質群(CCAN)がキネトコアの足場を形成する。細胞分裂時には、その外側に、紡錘体微小管との直接結合するKMNネットワークとよばれるタンパク質構造体が形成される。本研究では、細胞周期依存的に変化するキネトコアにおける分子会合モードの制御機構を理解するため、CCANコア複合体中、間期特異的に形成されるCENP-C/CENP-LN複合体の構造機能解析を計画した。ニワトリ由来のCENP-C、CENP-LN複合体を組換えタンパク質として発現・精製し、生化学的手法を用いた結合領域の同定を行った。研究期間中に、CENP-C、CENP-LN複合体を含むヒトのCCANコア構造が報告され、我々の結果と照らし合わせると、ニワトリとヒトでCENP-CとCENP-NL間の相互作用は保存されていることがわかった。しかし、試験官内で再構成した複合体の構造知見のみでは、細胞周期依存的なCCANの構造制御を理解するには至らない。そこで、実際に細胞内で起こっているCCANの構造変化の実態を調べるため、ニワトリのDT40細胞からCCAN複合体の精製を行った。第一に、ゲノム編集技術を用いてアフィニティータグを融合したキネトコアタンパク質を定常的に発現するDT40細胞を確立した。二段階のアフィニティー精製によって、CENP-NL複合体を含む6種類のタンパク質から構成されるキネトコアのコア複合体を精製することに成功した。クライオ電顕を用いて、この複合体試料を調べたところ、均一な粒子として観察された。次年度では、クライオ電顕による解析、リン酸化状態の解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、ニワトリ由来のCENP-C、CENP-LN複合体を組換えタンパク質として発現・精製し、生化学的手法と構造生物学の手法を併用して構造機能解析を行うことを計画していたが、複数の研究グループからCENP-C、CENP-LN複合体を含むキネトコアの部分構造が報告された。しかしながら、組換えタンパク質を用いて再構成した複合体の構造知見のみでは、細胞周期依存的なキネトコアの構造制御機構を理解するには至っていない。このような状況を踏まえ、実際に細胞内で起こっているキネトコアの構造変化に関する知見を得るため、ニワトリのDT40細胞からキネトコア複合体を精製し、構造機能解析を行うこととした。これまでに、実験の目的に応じて改善の必要はあるが、培養細胞からの複合体精製の系を確立、複合体の精製に成功しており、方針を修正した後の実験は順調に進んでいる。当初の研究計画よりはやや遅れているが、本来の研究計画の目的を期間内に達成することは可能である。
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今後の研究の推進方策 |
実際に細胞内で起こっているキネトコアの構造変化に関する知見を得るため、ニワトリのDT40細胞からキネトコア複合体を精製し、構造機能解析を行う。 1) ニワトリDT40 培養細胞から精製したキネトコアコア複合体を用いて、クライオ電子顕微鏡による単粒子解析を行い、複合体の立体構造を調べる。この解析により、細胞内の状態をより反映した複合体の立体構造情報、および複合体の可塑性に関する情報が得ることができると考える。 2) 細胞周期に依存したキネトコアの構造変化は、リン酸化などのタンパク質の翻訳後修飾によって制御されている可能性が高いが、各タンパク質因子の修飾パターンは完全にわかっていない。そこで、今回ニワトリ細胞から精製した複合体中のキネトコアタンパク質のリン酸化状態を生化学的手法、質量分析を用いて解析する。さらに、細胞周期を同調させ、間期または分裂期のみの細胞を集めて、リン酸化状態の違いを調べる。本研究では、第一にCENP-NL複合体に焦点を当てて解析を行う。構造知見と合わせて、分子会合に重要なリン酸化部位を同定できたのちには、リン酸化変異体を作成し、細胞内での機能解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
国外の競合グループから報告された新規知見により、当初計画していた研究の方針変更をする必要が生じた。そのため、消耗品、備品の購入を見直したため、予定していたよりも部品費が抑えられた。翌年度分として請求した助成金と合わせて、研究計画の修正に応じて、必要な物品費の購入に充てる予定である。特に、当初予定していなかった質量分析などの受託解析 (500,000円程度の見込み)の必要性が見込まれるので、その費用に充てる。また、細胞培養のために必要な生化学試薬の購入費用が予定よりも増える見込みなので、今回の繰越した経費を充てることを計画している。
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