研究課題/領域番号 |
21K06053
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
千葉 志信 京都産業大学, 生命科学部, 教授 (20523517)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | YidC / タンパク質膜挿入 |
研究実績の概要 |
膜タンパク質を膜に組み込む膜組込装置には、孔(チャネル)を持つタイプと持たないタイプがある。チャネル型膜組込装置の分子機構の理解は比較的すすんでいるが、非チャネル型タンパク質膜組込装置の分子機構はその多くが不明である。本研究では、非チャネル型タンパク質膜組込装置YidCの分子機構と生理機能を理解するために、変異解析や阻害剤のスクリーニングを行うことを計画した。 2022年度は、昨年度に引き続き、YidCの阻害剤の探索をさらに進めた。候補化合物について、YidCの変異株に対する効果を見たところ、いくつかの阻害剤は、その阻害効果を喪失した。このことから、これらの阻害剤の直接のターゲットがYidCであることが強く示唆された。 一方で、昨年度から行っている、枯草菌YidCの新規基質の探索をさらに進めた。枯草菌膜タンパク質とMifMとを融合した各種レポーターを作成し、その膜挿入のSpoIIIJ依存性を検討し、結果として、複数のYidC基質と思われるものを同定した。さらに、これらの膜挿入がSpoIIIJの溝の塩基性残基に依存している事が示された。このことは、SpoIIIJの溝の塩基性が普遍的に重要であることを示している。一方、各基質間で、膜挿入に重要な性質がそれぞれ異なることも明らかになった。このことから、YidCは、基質特異的な相互作用も合わせてタンパク質の膜挿入を促進していることが示唆された。これらについて、必要なデータを揃え、論文としてまとめ、投稿した。 YidCの細胞質領域の変異解析をより詳細に進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
YidCの阻害剤について、有力と思われる化合物が複数見出された。また、YidCの新規基質を複数同定し、それらの成果をまとめ、論文投稿を行った。その中で、YidCの塩基性残基の普遍的な重要性と基質固有の相互作用の存在を報告した。 以上の成果が得られたことから、研究計画がおおむね順調に進行していると判断出来る。
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今後の研究の推進方策 |
YidCの細胞質領域の変異解析を進め、YidCと基質とのどのような相互作用を介して膜挿入が促進されるのかについての知見を得る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画よりも、消耗品の使用量を低く抑えることができたため、その分を2023年度に回すことにした。2023年度は、YidCの細胞質領域の変異解析に、依然として多数のDNAプライマーが必要であるため、2022年度分の繰越請求した分と2023年度分とを併せて使用することで、着実に計画を遂行する。
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