研究課題/領域番号 |
21K06059
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
斎藤 将樹 東北大学, 医学系研究科, 助教 (50400271)
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研究分担者 |
佐藤 岳哉 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (10312696)
森 優 東北大学, 大学病院, 講師 (70634541)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 骨粗鬆症 / 骨形成 / 4.1Gタンパク質 / 一次繊毛 |
研究実績の概要 |
骨は、骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収によって常に代謝回転しており、正常な骨組織が維持される。閉経によって女性ホルモン(エストロゲン)量が減少すると、骨芽細胞活性が減少し破骨細胞活性が上昇するため、両細胞の活性バランスが破綻し骨粗鬆症を発症する。骨粗鬆症の治療には主に、若年期や軽症患者には骨吸収抑制薬を用い、重症化すると骨形成促進薬を用いる。しかし、若年期や軽症患者にも適応可能な骨形成促進薬を開発すれば治療法の選択肢となり、重症化リスクを軽減できる可能性が考えられる。骨芽前駆細胞が骨芽細胞に成熟する(骨芽細胞分化)する過程は骨形成に不可欠であるが、その制御機構には不明のことが多い。 4.1Gは細胞膜直下で種々の膜タンパク質やアクチン線維と結合し、細胞の形態や膜タンパク質の細胞膜局在を維持する。一方、一次繊毛は細胞外に形成される不動性のシグナル受容器である。骨芽前駆細胞に形成される一次繊毛は、ヘッジホッグシグナルを受容すると、骨芽細胞分化を促進する。本年度は、膜裏打ちタンパク質4.1Gが骨芽細胞分化において果たす役割について、以下の機構を発見した。 (a) 骨形成における4.1Gの役割を検討するため、新生仔脛骨における骨形成能を解析した。その結果、新生仔期には性別によらず、4.1Gが骨形成促進作用を示すことが見出された。 (b) マウス新生仔脛骨およびマウス骨芽前駆細胞株 (MC3T3-E1) を用いた解析により、4.1Gは骨芽前駆細胞に一次繊毛形成を促進する結果、一次繊毛由来骨芽細胞分化シグナルを惹起することが示された。 以上のことから、4.1Gは骨芽前駆細胞において一次繊毛形成を促進し、骨芽細胞分化シグナルの惹起を通じて骨形成を進行する役割のあることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨形成促進薬の開発には、不明のことが多い骨形成の分子制御機構を理解することが必要である。2021年度は、4.1Gが骨芽前駆細胞において一次繊毛形成を促進し、骨芽細胞分化シグナルと骨形成を亢進する役割のあることを見出した (Saito et al., Int. J. Mol. Med., 2022)。すなわち、4.1G発現量および一次繊毛活性が、性別によらず骨形成の進行を決定づける重要な因子であることが理解されたことは、大きな進展である。 一方で、骨粗鬆症患者のうち80%を女性が占めるため、雌性に優位に働く骨形成機構が、エストロゲンの関与を中心として存在することが考えられる。しかし、エストロゲン依存的な骨形成における4.1G/一次繊毛系の役割は未解明であり、次年度の課題である。 全体として、研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
一般的に、4.1G発現量や一次繊毛形成能には性差はないと考えられている。それにもかかわらず幼児期の4.1G-KOマウス頸骨では、雌性のみ骨形成が抑制されることを、私は予備実験により見出した。すなわち、4.1G/一次繊毛系がエストロゲン依存的な骨形成において役割を担う可能性が考えられるため、次年度で検討する。具体的には、一次繊毛形成に関与し、かつ4.1Gが機能を制御するエストロゲン受容体を同定する。そのため、エストロゲン受容体をノックダウンしたMC3T3-E1細胞において一次繊毛形成能、ヘッジホッグシグナルの惹起、および骨芽細胞分化能 (アルカリホスファターゼ活性、分化関連遺伝子発現) を解析する。さらに、見出された受容体の機能が4.1Gノックダウンによって抑制されることを、受容体の核内移行や細胞内シグナル伝達の解析によって示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は順調に進み、研究成果を英語論文として発表することができた。 論文投稿費は共著者が支払いしたため、当初予定額より予算使用が少額で済んだ。 次年度は性差依存的な骨形成機構に関する研究を立ち上げるため、実験装置類や物品費に充てる予定である。
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