研究課題/領域番号 |
21K06060
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
天貝 佑太 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (90773896)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ERp44 / 初期分泌経路 / 小胞体 / 亜鉛 |
研究実績の概要 |
HeLa Kyoto細胞に、小胞体局在亜鉛輸送体ZIP7に対する阻害剤を処理したところ、阻害剤処理10分ごろから、小胞体中の遊離亜鉛濃度が劇的に上昇することが明らかとなった。さらに、分泌経路シャペロンタンパク質ERp44はその細胞内局在をゴルジ体から小胞体へと偏在させることが明らかとなった。これは、ERp44が小胞体から分泌できずに留まることが原因であった。ERp44基質タンパク質であるEro1aやERAP1を過剰発現させた細胞にZIP7阻害剤を処理したところ、これら基質タンパク質が細胞外へ分泌し、ERp44の基質の細胞内保持機能が阻害されることが示唆された。 次に、ZIP7阻害時にどのような分泌タンパク質の細胞外分泌に異常が生じるかを解明するために、ZIP7阻害剤処理細胞またはZIP7発現抑制細胞を血清不含培地で培養後、培養上精に含まれるタンパク質を限外濾過によって濃縮し、SDS-PAGEとCBB 染色によって可視化した。その結果、ZIP7を阻害した両細胞で明らかにタンパク質量が増加するバンドが観察された。このタンパク質バンドをゲルから切り出し、質量分析によって同定することに成功した。さらに現在では、影響を受けるその他のタンパク質についても網羅的に同定するための実験系を確立し解析を進めているところである。 FLAGタグを付加したヒトZIP7-FLAGタンパク質を発現するプラスミドを構築し、ヒトZIP7-FLAGを安定発現するHEK293T細胞を樹立し、タンパク質の精製方法について条件検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ZIP7を阻害した細胞内におけるERp44の振る舞いについて、当初の計画をもとに興味深い結果を複数得ることができた。このことは、小胞体内における亜鉛のホメオスタシスが分泌経路内のタンパク質品質管理機構に重要であることを示唆する結果であり、亜鉛の新たな機能を示す重要な発見である。実際に、小胞体亜鉛ホメオスタシスの破綻が、タンパク質分泌に影響を与えることも発見し、その詳細についても解析を進めることができた。これらの成果は当初の予定が順調に進展した結果であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ZIP7阻害時におけるERp44の機能変化に加えて、小胞体内機能の変化について追加で解析し、それらの研究成果を投稿論文としてまとめ報告する。ZIP7阻害時に影響を受ける分泌タンパク質を網羅的に決定し、小胞体亜鉛ホメオスタシスの破綻が与えるタンパク質品質管理への影響を解明し、細胞内亜鉛の新たな生理機能の探索に取り組む。 ZIP7のタンパク質発現、精製系を確立し、ZIP7の生化学解析を行う。十分な量のタンパク質を得ることが難しい場合は、細胞中でZIP7の機能を評価できる実験系の開発に取り組む。
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