研究課題/領域番号 |
21K06068
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
表 弘志 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (10273707)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ノルアドレナリン / アスコルビン酸 / ビタミンC / GLUT / GLUT8 / デヒドロアスコルビン酸 / クロマフィン顆粒 / トランスポーター |
研究実績の概要 |
ノルアドレナリンは神経伝達物質として、また恒常性を担うホルモンとして働いており、副腎では髄質クロマフィン細胞で合成し分泌されている。この細胞にはクロマフィン顆粒と言われる分泌性の小胞があり、ノルアドレナリンはこの小胞内で合成されている。小胞型モノアミントランスポーター(VMAT)によって顆粒内に輸送されたドーパミンは、ドーパミンβヒドロキシラーゼによって水酸化されてノルアドレナリンになる。ドーパミン合成にはアスコルビン酸が必須であり、クロマフィン顆粒内に多量のアスコルビン酸が蓄積されていることは1980年代から知られていたが、どのようにしてアスコルビン酸が顆粒内に輸送されているのかは不明なままであった。これまで、アスコルビン酸を顆粒内に輸送するトランスポーターを同定する試みがなされてきたが、未だ明らかになっていない。 本研究ではデヒドロアスコルビン酸を輸送できるGLUT(グルコーストランスポーター)に着目した。GLUTファミリーの中でデヒドロアスコルビン酸を運ぶことが知られているGLUT8は副腎にも発現している。そこで、このトランスポーターがクロマフィン顆粒内に酸化型アスコルビン酸であるデヒドロアスコルビン酸を運び、シトクロムb561によって還元されてアスコルビン酸になるものと考えた。本研究では、GLUT8のクロマフィン細胞での発現と局在、クロマフィン顆粒でのノルアドレナリン合成に対するGLUT阻害剤の効果、GLUT8 発現抑制がノルアドレナリン合成に対して与える効果について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GLUT8に対する特異的抗体を用いて副腎および単離したクロマフィン細胞での局在を免疫組織化学的に解析した。その結果、GLUT8が副腎髄質のクロマフィン細胞に発現している事が明らかになった。また、GLUT8はクロマフィン顆粒のマーカであるクロモグラニンと共局在を示したが、他のオルガネラマーカとは共局在を示さなかった。さらに、単離したクロマフィン顆粒を用いてウェスタンブロット解析をしたところ、約50kDaの位置にGLUT8抗体に反応するシグナルが認められた。以上の結果はGLUT8がクロマフィン顆粒に存在していることを示している。 また、単離したクロマフィン顆粒を用いてノルアドレナリン合成活性を測定した。この活性はGLUT阻害剤のほか、H+-ポンプ阻害剤、シトクロムb561阻害剤、VMAT阻害剤でも阻害された。この結果は酸化型スコルビン酸であるデヒドロアスコルビン酸がGLUTによって顆粒内に運ばれ、b561によって還元されたのちにノルアドレナリン合成に使われているという考えと一致するものであった。 現在、GLUT8がノルアドレナリン合成に関わっているか、RNAi実験により解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までの免疫組織化学的解析でGLUT8がクロマフィン顆粒に局在すること、生化学実験によってGLUTファミリーのグルコーストランスポーターがノルアドレナリン合成に関わっている事が明らかになった。引き続き下記の実験を行う。 1)RNAi実験によりGLUT8のクロマフィン細胞でのノルアドレナリン合成への関与を明らかにする。 2)RNAi実験によりGLUT8のクロマフィン顆粒へのアスコルビン酸蓄積への関与を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子発現抑制実験に先駆けて膜小胞を用いた生化学実験を先行させたため、本年度使用額か少なかった。
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