ノルアドレナリンは副腎クロマフィン細胞の分泌小胞内(クロマフィン顆粒)でドーパミンから合成される。この反応を触媒するDβH(ドーパミンβヒドロキシラーゼ)は補酵素としてアスコルビン酸を必要とする。この顆粒内にはアスコルビン酸が蓄積していることが1980年代から知られていたが、どのようにして顆粒内に輸送されているのかは明らかになっていない。 申請者は酸化型のアスコルビン酸が小胞内に輸送された後、還元されるものと考えて解析を進めてきた。本研究ではこれまでの解析から、細胞内膜型グルコーストランスポーターファミリーに属するGLUT8がクロマフィン顆粒にアスコルビン酸を蓄積するトランスポーターの実態であると考え解析を進めた。 免疫組織化学的手法および、ウェスタンブロットによる解析からGLUT8がクロマフィン顆粒に存在している結果を得た。また、単離したクロマフィン顆粒を用いてノルアドレナリン合成活性を測定したところ、GLUT8阻害剤で合成活性が低下した。さらに、単離したクロマフィン細胞を用いてGLUT8の遺伝子発現を抑制したところ、ノルアドレナリンの分泌量、合成量ともに低下した。これらの結果はGLUT8がクロマフィン顆粒でのノルアドレナリン生合成に必須であることを示している。アスコルビン酸蓄積との関連を明らかにするために、クロマフィン細胞からのアスコルビン酸分泌量を測定したところ、GLUT8のノックダウンによって分泌量の低下が認められた。 以上の結果はGLUT8がクロマフィン顆粒へのアスコルビン酸蓄積を介してノルアドレナリン生合成関わっていることを示唆している。
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