研究課題/領域番号 |
21K06069
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
谷村 進 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (90343342)
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研究分担者 |
武田 弘資 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (10313230)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ストレス応答 / ミトコンドリア / 細胞骨格 / 微小管 / アクチン |
研究実績の概要 |
本研究では、ミトコンドリアストレスを起点とするシグナルがどのように細胞骨格を制御し、それがどのようにマイトファジーを調節し、細胞全体のストレス応答につなげているかを解明することを目的としている。そこで、当該年度はミトコンドリアストレスに応答した細胞骨格 (微小管・アクチンフィラメント) 制御の分子機構を明らかにすることを目指して解析を進めた。 ミトコンドリアストレスに応答した微小管制御の分子機構:ミトコンドリアストレスに応答してミトコンドリアから細胞質へと放出される脱リン酸化酵素PGAM5が、微小管結合タンパクMAP7と結合すること、またその結合部位はMAP7の微小管結合領域を含むアミノ末端側にあることを明らかにした。また、マイトファジーの進行過程でMAP7がPGAM5によって脱リン酸化される可能性を見出し、さらにその脱リン酸化サイトの候補を絞り込むことができた。 ミトコンドリアストレスに応答したアクチンフィラメント制御の分子機構:PGAM5はアクチンフィラメント形成制御因子Cortactinのアクチンフィラメント結合部位を含む領域に結合することが分かった。また、PGAM5はCortactinを直接脱リン酸化することを明らかにした。 これらの結果は、マイトファジーの過程で起こる細胞骨格の制御が、少なくともその一部分はミトコンドリアから放出されたPGAM5によって制御されており、またその分子機構として、MAP7-微小管、およびCortactin-アクチンフィラメントが働いていることを示している。脱リン酸化によるMAP7とCortactinの機能変化についての解析が、今後の重要な解析課題であると考えているが、当該年度の解析を通して、ミトコンドリアストレスによる細胞骨格制御の具体的な分子機構の一端を明らにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目標は、ミトコンドリアストレスに応答した細胞骨格の制御が細胞全体のストレス応答にどのように働くかであるが、そのために研究計画を3つの項目(1)ミトコンドリアストレスに応答した微小管制御の分子機構、(2)ミトコンドリアストレスに応答したアクチンフィラメント制御の分子機構 、(3)ミトコンドリアストレスに応答した細胞骨格の制御を介したオルガネラ調節機構に分けて進めることとしている。 当該年度は(1)と(2)について解析を進め、具体的な標的分子を特定することができた。当該年度の解析を通して、今後の分子機構解明に向けた解析のための重要な手がかりとなる成果を得ることができた。よって、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当該年度の成果を踏まえて、細胞骨格を制御するMAP7やCortactinがPGAM5によって脱リン酸化されると、その機能がどのような変化するのか、またそれによって、どのようにマイトファジーが制御されるのかという点に焦点を当てて解析を進める。また、これまでに同定してきたPGAM5の結合候補タンパク質の中で、細胞骨格の制御に関わる他の分子についても、まずはMAP7とCortactin同様にPGAM5との結合および脱リン酸化について検討する。 PGAM5は多量体を形成するが、その多量体形成能によって細胞内の局在が変化したり、細胞の形態変化を引き起こしたりする。次年度は、このPGAM5の多量体形成能に着目しながら、MAP7とCortactinに対する影響を解析し、細胞骨格制御との関連について検討を進める。 これらの解析を通して得られた知見を踏まえ、ミトコンドリアストレスに応答した細胞骨格の制御を介したオルガネラ調節機構およびマイトファジー調節機構の解明につなげることを目指す。
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