研究課題/領域番号 |
21K06075
|
研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
柴田 識人 国立医薬品食品衛生研究所, 生化学部, 室長 (30391973)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ゲノム編集 / Cas9 / タンパク質制御 |
研究実績の概要 |
CRISPR/Cas9システムによるゲノム編集技術において課題となる「意図しない変異(オフターゲット編集)」を抑制し、本技術のさらなる安全性向上に資するためには、CRISPR/Cas9システムを時空間的に制御することが求められている。一方で哺乳類細胞に発現させたCas9タンパク質が比較的安定であるという報告もあることから、適切なタイミングでCas9タンパク質の発現量を調節するシステムの構築が必要であると考えられている。本研究では、Cas9タンパク質がどのようにして哺乳類細胞内で安定に発現するのかその分子機構の解明を試みると共に、この知見を利用するなどして、Cas9タンパク質の哺乳類細胞内での発現量を適切に制御するシステムの構築を目指す。 今年度の研究成果は以下の通りである。 1) Cas9タンパク質の哺乳類細胞内での安定発現機構として、分子シャペロンや脱ユビキチン化反応といった既知の安定化機構の関与を検討するべく、これら各機構の阻害剤を用いて検討した。しかしながらCas9タンパク質の安定化との明確な関与を見出せなかった。従って哺乳類細胞に発現させたCas9タンパク質は、上述した既知の機構とは異なる新規の分子機構によって安定化している可能性が示唆された。 2) 薬剤依存的にCas9タンパク質の発現を誘導する機構と分解誘導する機構を組み合わせたシステムを構築した。これにより哺乳類細胞におけるCas9タンパク質の発現量を数時間オーダーでオン・オフに制御することが可能となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、Cas9タンパク質の細胞内発現量を制御するシステムの確立と、Cas9タンパク質量の制御がゲノム編集技術における意図しない変異の抑制に対して与える影響の検討が目的であり、本目的を遂行するためにはCas9タンパク質の発現量を精密に制御できるシステムは必要不可欠である。薬剤依存的なCas9タンパク質の発現誘導機構と分解誘導機構を組み合わせたシステムを構築したことで、Cas9タンパク質の発現量の精密な制御ができるようになったことから、今後意図しない変異の抑制への影響も検討することが可能になった。従って本研究は順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに構築したCas9タンパク質の発現誘導/分解誘導システムを利用したゲノム編集を実施し、Cas9タンパク質の発現時間によるオンターゲット編集やオフターゲット編集の効率とその割合への影響を検討することで、CRISPR/Cas9によるゲノム編集におけるオフターゲット編集のさらなる低減と安全性向上に寄与できるシステムの提起を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 研究進捗自体は順調であったが、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、研究消耗品の入手や実験の実施が困難な時期があり当該次年度使用額が生じた。 (使用計画) これまでに構築したCas9タンパク質の発現制御システムを用いて、Cas9タンパク質発現時間とゲノム編集効率やその割合への影響を検討するべく、実験遂行に必要な一般試薬や実験用プラスティック器具器具などとして相当額を使用する。また研究成果研究成果の発表(論文発表や学会発表)として相当額を使用する予定である。
|