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2022 年度 実施状況報告書

BARタンパク質とN-WASPを介する細胞遊走に連動した筋細胞融合の制御機構

研究課題

研究課題/領域番号 21K06078
研究機関千葉大学

研究代表者

高野 和儀  千葉大学, 大学院理学研究院, 助教 (60466860)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードアクチン細胞骨格 / 筋細胞融合 / 細胞運動 / 筋原繊維形成 / 細胞表層アクチン / コスタメア
研究実績の概要

骨格筋量の増加(筋肥大)機構の解明は我が国の高齢化社会を支える上で重要な課題である。骨格筋は多核の細胞から構成されており、本研究で明らかにしようとする筋細胞融合の機構は筋肥大において極めて重要な段階である。昨年度の結果により、PMactによって筋細胞融合が阻害されたため、筋細胞融合には細胞表層アクチンの動態が関与している可能性が浮上した。そこで、この仮説をさまざまな面から検証した。まず、lifeactにより細胞内のすべてのアクチンフィラメントを可視化すると、筋細胞融合は顕著に抑制された。したがって、筋細胞における細胞内アクチン動態は筋細胞融合に重要であることが示された。そこで、Lyn10-tagにより細胞膜に局在させたutrophin(ABD: actin binding domain)を用いて細胞表層アクチンのみを安定化させた場合、PMactと同様の効果が現れるかを検証した。Lyn10-utrophin(ABD)を恒常的に発現する細胞では筋細胞融合が阻害されたが、その程度はPMactに比較すると阻害効果は低かった。さらに、ウェスタンブロッティングにより細胞表層アクチンフィラメントの動態を制御するEzrin(T567)のリン酸化は、筋細胞分化過程で低下することが明らかになった。そこで、Lyn10-tagにより細胞膜へ局在させたEzrin(T567E)活性型変異体を発現する細胞を作製した。この細胞において筋細胞融合が阻害された。したがって、Ezrinのリン酸化制御を介した細胞表層アクチンと膜の解離あるいは細胞表層アクチンのターンオーバーが筋細胞融合に必要であることが示された。これをさらに裏付けるために今後は、リン酸化Ezrinの局在、lamellipodia、筋原繊維との位置関係を明らかにするとともに、N-WASPやBARタンパク質の関与も明らかにする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

PMactの予期せぬ作用により、当初の研究計画では想定をしていなかった筋原繊維形成についても考慮して進めることになった点は研究意義を深く掘り下げ独自性を得ることにもなった。このような当初の研究計画よりも手間がかかる分と令和4年度には研究室の移転のために大幅なタイムロスがあった。
しかしそれを差し引いても当初計画よりは深い内容に改変しつつ、概ね当初の計画に沿うかたちで進展している。

今後の研究の推進方策

令和3年度では、筋細胞分化過程では方向性を有する細胞運動および同じく方向性を有するlamellipodia形成が起こることを明らかにしている。この事柄と令和4年度に明らかにしたEzrinのリン酸化状態との関係について令和5年度では調べる必要がある。そこで、リン酸化Ezrinを認識する抗体による免疫蛍光染色により、筋細胞分化過程におけるEzrinのリン酸化が起こる細胞膜領域、および運動方向を決めるlamellipodia、筋原繊維との位置関係を明らかにする。さらにEzrin(T567E)についてはN-WASPやBARタンパク質によるlamellipodia形成への影響も調べる。その一方で、PMactとutrophin(ABD)の効果の差は説明できていない。そこで、PMactとLyn10-utrophin(ABD)の違いが細胞膜からのアクチンフィラメントの距離である可能性を検討するため、PMactのリンカーを短くしたPMact-shortを作製して同様に実験に用いる。細胞表層アクチンについて骨格筋型myosinやalpha-actininの局在を指標とすることで筋原繊維形成を評価する。

備考

バイオシグナル研究室
https://biosignaltelab.wordpress.com

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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