昨年度の結果より、リン酸化Ezrinの局在、lamellipodia、筋管細胞との位置関係を検討した。細胞融合期におけるリン酸化Ezrinは主に筋管細胞の細胞辺縁部で検出された。このことよりEzrinのリン酸化は主に筋管細胞膜において起こることが示唆された。発生期の筋原繊維形成が細胞膜直下で起こることからEzrinのリン酸化が筋原繊維形成と関係する可能性がある。また、PMactやutrophin(ABD)と同様に、筋芽細胞においてEzrin(T567E)を発現させると細胞遊走や筋細胞融合が阻害されることから、細胞膜直下のアクチン動態は細胞遊走と細胞融合に関与することが示された。一方、令和3年度において筋細胞分化過程では指向性の細胞運動および指向性のlamellipodia形成が起こることを明らかにしている。これに付随して筋細胞分化過程におけるlamellipodia形成は筋管細胞に指向性があることも示された。また、lamellipodia形成の指向性にはERK-cortactin-N-WASP軸が関わることを明らかにした。Amph2の局在とN-WASPの活性化を検討したところ、lamellipodiaにおいてAmph2の局在およびN-WASP活性が認められた。さらに、N-WASP siRNAおよびN-WASP阻害剤の作用により筋細胞融合の減少が認められた。本研究により得られた結果を総括すると、細胞膜直下におけるN-WASP-BARタンパク質はEzrinのリン酸化制御に連動して筋細胞融合に関わっており、細胞融合を引き起こす運動指向性にはERK-cortactin-N-WASP軸が関与することが示された。
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