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2023 年度 実績報告書

磁覚の情報伝達機構における蛋白質分子基盤の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K06093
研究機関国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構

研究代表者

新井 栄揮  国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 上席研究員 (00391269)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードタンパク質 / 磁覚 / X線小角散乱
研究実績の概要

渡り鳥が地磁気の伏角を認識する仕組みとして、網膜細胞の蛋白質クリプトクロム(CRY)の青色光励起によって発生したラジカル対の孤立電子の電子スピンを利用する「CRY仮説」が注目されている。しかし、同仮説が成立するには、磁力線とラジカル対の相対角を定めるために、細胞内の複数のCRYを規則的に配向・固定させる機構が必要であり、且つ、磁場情報をCRYから神経系に伝達する機構が必要である。本課題では、これらの機構解明に資する基盤研究を実施した。
申請者は2022年度までに、代表的磁覚保有種であるヨーロッパコマドリ由来CRY (erCRY4)とerCRY4受容体候補の一つである電位依存性カリウムチャンネルサブファミリーV(erKCNV2)の細胞内ドメインの一部(erKCNV2-2)を調製し、それらの構造・物性・相互作用様式を精査した。その結果、青色光照射時のerCRY4は、①三次構造が収縮する大きな構造変化を生じること、及び、②erKCNV2-2混在下では急激に多量体化し、一部は線維化・柱状化しうることなどが明らかになった。
2023年度は、erCRY4単独の自己会合性や構造的特徴を精査するために、幅広い空間スケール(実空間距離13~1500Å)のX線溶液散乱解析を実施した。同解析により、erCRY4単独は平均構造として平板状の多量体を形成しうることが明らかとなり、erCRY4/erKCNV2-2複合体とは異なる多量体構造形成を示唆する結果が得られた。これらの結果から、青色光存在下でerKCNV2-2とerCRY4が相互作用すると、その相互作用様式に即してerCRY4が細胞膜上に秩序的に配置・固定化され配向規則性が生じる可能性が明らかとなった。また、その相互作用・多量体化によって細胞膜上のerKCNV2が集合すれば、局所的な細胞膜電位に影響して磁場情報を神経系に伝達する可能性がある。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Self-Oligomerization of Pigeon Iron-Sulfur Protein Induced by Magnetic Field2023

    • 著者名/発表者名
      Shigeki Arai, Rumi Shimizu, Motoyasu Adachi, Hirai Mitsuhiro
    • 雑誌名

      Photon Factory Highlight 2022

      巻: 1 ページ: 22,23

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 小角散乱法による蛋白質の磁場応答性と磁覚の研究展開2024

    • 著者名/発表者名
      新井栄揮
    • 学会等名
      PF研究会「物質・生命研究における小角散乱法の展開:現状と展望のための討論会」
    • 招待講演
  • [学会発表] Structural studies of magnetic field-responsive proteins by small-angle X-ray scattering analysis2023

    • 著者名/発表者名
      Arai Shigeki, Shimizu Rumi, Adachi Motoyasu, Mitsuhiro Hirai
    • 学会等名
      第61回日本生物物理学会年会
  • [学会発表] 鳥類の磁覚の機構における蛋白質基盤の構造学的洞察2023

    • 著者名/発表者名
      新井栄揮, 清水瑠美, 安達基泰
    • 学会等名
      第23回日本蛋白質科学会年会
  • [図書] 量子生命科学ハンドブック2023

    • 著者名/発表者名
      新井栄揮、他
    • 総ページ数
      10
    • 出版者
      エヌ・ティー・エス
    • ISBN
      9784860438821
  • [備考] PHOTON FACTORY HIGHLIGHTS 2022

    • URL

      https://www2.kek.jp/imss/pf/science/publ/pfhl/2022/pfhl_all_2022.pdf

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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