研究課題/領域番号 |
21K06099
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
森本 雄祐 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (50631777)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 発生 / 脱分化 / 細胞内pH / シグナル伝達 / 蛍光イメージング |
研究実績の概要 |
細胞分化と脱分化の制御機構の解明は、発生生物学、さらには再生医工学の分野において必須の課題である。これに対し、細胞内pHは細胞分化やシグナル伝達において、重要な要因の一つとして働いていることが知られているが、その詳細なメカニズムは明らかになっていない。発生のモデル生物として利用されている細胞性粘菌の柄と胞子への分化において、細胞内のpH変化がトリガーとなっていることが古くから示唆されているが、分子機構は十分には明らかになっていない。 本研究課題では、細胞性粘菌の細胞分化と脱分化に伴う細胞質pH変化を、高感度な分化・脱分化マーカーとして捉える計測手法を確立することを目指している。これまでに、開発した高感度pHイメージング手法を用いることで、細胞性粘菌の柄細胞への分化、および予定柄細胞からの脱分化に伴う細胞質pH変化を1細胞レベルで計測することが可能となっている。本年度は、単細胞期から多細胞期にかけての細胞質pHを長時間タイムラプス計測することで、細胞質pHの変化と細胞分化の関係を捉えることを進めた。このとき、細胞質pHだけでなく、細胞内cAMP濃度、細胞内カルシウム濃度などの他のシグナルを同時計測することで、各シグナルがどのように関わっているかを明らかにすることを目指した。また、細胞内および細胞外のpH変化が脂質に与える影響および細胞運動をモニターすることで、pHの細胞分化における働きの分子機構の解明を目指した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に整備した新規研究スペースにおいて、細胞培養、蛍光顕微鏡観察、分子遺伝学実験を効率的に問題なく実施することができている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、引き続き以下の研究計画に従って実施する。 【①pH感受性蛍光タンパク質を用いた脱分化過程のpHイメージング】多細胞体からの脱分化過程で、細胞質pHがどのタイミングでどのように変化するかを定量的に計測する。 【②光刺激による細胞質pHの人為制御】細胞質pHが直接的に脱分化を制御しているかを調べるために、細胞質pHを人為的に制御する。 【③脱分化と細胞質pH変化の相関を制御する分子機構の解明】変異体の計測により、細胞内pH調整による分化と脱分化の分子メカニズムを解明する。
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