研究実績の概要 |
多くのタンパク質で見られる多量体形成は、タンパク質の活性制御などに重要な役割を果たす。研究代表者は非六量体型スーパーファミリー1ヘリカーゼUvrD のC末端アミノ酸欠失変異体が、野生型に比べて多量体を形成しづらいことを明らかにした。一方、その多量体構造は報告されておらず、多量体を構成する個々のUvrDがどのような相互作用を経て、ATP加水分解エネルギーを使いDNA巻き戻しをしているのかは不明である。 そこで本研究ではUvrDのDNA巻き戻し機能に関わる多量体形成に重要なC末端アミノ酸に注目し、UvrDの多量体構造・DNA巻き戻し機能・ATPの結合解離(ATPase)の相関関係を蛍光1分子イメージングで明らかにする。そしてこれまで明らかにするのが困難だったタンパク質の多量体形成とそれによる機能発現の間のブラックボックスに迫ることを目指している。 2021年度は、多量体を形成できないとされるC末端40アミノ酸欠損変異体(UvrDΔ40C)が定説に反し、二量体あるいは三量体でDNAを巻き戻していることを明らかにし2020年度に出版した論文(Biophysical Journal 118, 1634~1648 (2020))に関連して依頼された邦文総説(生物物理 61, 227-231 (2021))および英文総説(Biophysics and Physicobiology 19, e190006_1-e190006_16 (2022))を出版した。また、2020年度に見いだした、40アミノ酸より多くのC末端アミノ酸欠失変異体の複数分子によるDNA巻き戻し過程の解析を進めたほか、UvrDの複数の特定サイトの特異的蛍光標識に向けたUvrD変異体の構築、UvrD多量体構造の蛍光1分子イメージング、ゼロモード導波路による高濃度蛍光性ATP条件下の蛍光1分子イメージング、DNA巻き戻しの1塩基分解能観察に取り組んだ。
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