研究実績の概要 |
既存のリガンド結合予測法では無視されていた「水和」を顕に考慮することで、リガンド結合予測精度を向上させることを目指し、以下の研究を行った。(1)水和分布を高速かつ正確に予測する深層学習モデル「gr Predictor」の論文を出版した。(2)「gr Predictor」とグリッドベースの不均一溶液理論(GIST)を融合し、水和熱力学量の分布を高速で計算する深層学習モデルを開発した。構築した深層学習モデルのパフォーマンスを調べるために、10個のタンパク質に適用した。具体的には、リガンドが結合する際にタンパク質から移動する水分子の自由エネルギーを計算した。構築した深層学習モデルとGISTの両方で行い、結果を比較した。その結果、深層学習モデルで得た水分子の自由エネルギーのGIST計算結果からの誤差率は、約4%であった。この結果は、我々の深層学習が高精度でGISTの計算結果を再現できることを意味する。また、我々の深層学習モデルは、水和自由エネルギー分布を約1分程度で計算することが出来、この計算時間はGIST計算(2日程度)の約1/1000であった。よって、我々の深層学習モデルは、高速にかつ正確に水和自由エネルギー分布を計算できることが分かった。(3) 創薬への応用に向けて、「gr Predictor」と水を顕に考慮したドッキング手法(A.H. Mahmoud, et al., Commun. Chem., 2020, 3, 19)を融合した。(4)2量体界面の水和分布を「gr Predictor」で予測することに成功した。(5)単純流体を用いて、分子性流体用積分方程式理論で得られた水和エントロピーを定量的に再現する手法について、論文を出版した。(6)AlphaFold2で生成される立体構造において、側鎖の向きがPDB構造と異なること、また、それを拡張アンサンブル法で修正できる可能性について、論文を出版した。
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