研究課題
本年度は,NMR滴定実験データから蛋白質間およびアミノ酸残基特異的に結合解離定数や解離速度定数を算出するプログラムを新たに開発し,GRB2-SOS1, Drk-Sos, KRAS-RGL2の相互作用解析に適用した.本手法の特徴は,特に化学シフト変化の回帰とスペクトル全体を推定する2次元線形回帰の両方の機能を有している点にある.また,単純な1:1結合のモデルに加え,two-binding site independent, cooperative binding, conformational selection, induced-fit modelなどの複数のモデルを選択して回帰分析が可能である.これらのモデルの選択にはbootstrap法を用いて評価できる.本手法を用いた解析の結果,GRB2-SOS1およびDrk-Sosの相互作用では,GRB2とDrkの2つのSH3ドメインのうち,N末端側のSH3ドメインがC末端側のものよりSOSのproline rich motif (PRM)とより強く結合することが明らかになった.この結合の違いは解離定数の値で20倍ぐらいの違いがあり,この違いが液液相分離に大きく寄与しているのではないかと推定した.また,SOS1側には10カ所の結合部位があると予想されていたが,解析の結果,それらの結合は一様でなく,かなり差があることが分かった.また,SOS1-PRMのGRB2への結合は,当初推定されていた相互作用部位以外にも影響を及ぼしており,この変化は,GRB2のドメイン配向の変化,もしくは2量体化に影響を与えていると推定した(論文投稿中).Drk-Sosおよびリン酸化EGFRペプチドとの相互作用解析の成果についても,2報の論文として,学術誌への発表(Int. J. Mol. Sci. 2023)および投稿を行った.
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
Int. J. Mol. Sci.
巻: 24 ページ: 14135 (1-13)
10.3390/ijms241814135
Life Sci. Alliance
巻: 7 ページ: e202302080
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Cryst. Growth Des.
巻: 23 ページ: 5264-5278
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Precision Medicine
巻: 6 ページ: 827-832