研究課題/領域番号 |
21K06115
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
梅村 和夫 東京理科大学, 理学部第二部物理学科, 教授 (60281664)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | パパイン / 原子間力顕微鏡 / 近赤外 / カーボンナノチューブ / 1分子 |
研究実績の概要 |
酵素パパインの耐熱性について、原子間力顕微鏡(AFM)による1分子液中観察実験と、単層カーボンナノチューブ(SWNT)の近赤外発光(PL)を用いたスペクトル測定実験、さらにデジタルホログラフィック顕微鏡、近赤外顕微鏡による観察実験も試みた。研究成果として、第一に、昨年行ったAFM観察実験について、査読付き論文1報を発表し、国内外での学会発表も行った。第二に、昨年度は室温での液中AFM観察にとどまっていたが、今年度は温度を変化させての液中AFM観察を行うことができた。基板上に孤立して吸着させた個々のパパイン分子を、まず室温の緩衝液中でAFM観察し、続いて液温を37度に温度を上昇させて再観察すると、パパイン分子の体積が大きくなる(膨らむ)ことが明らかになった。続いて温度を室温に戻すと、体積はやや減少するが、完全に元通りにはならなかった。今のところ現象論にとどまっているが、温度を変化させての観察手順が確立されてきたため、同様の手順で活性化したパパイン分子なども観察できると考えられる。第三に、DNAで単分散したSWNTを静電力によってナノ多孔質バイオシリカ(珪藻殻)表面に吸着させ、マイクロデバイス化した。最初に酸化剤でSWNTを消光しておき、その分散液にパパインを添加したところ、SWNTの発光が回復することが分かった。これはパパインの抗酸化能を示していると解釈できる。比較のために還元剤であるジチオスレイトール(DTT)を添加すると、この場合もPL発光が回復した。ただし、パパインとDTTでは、発光回復の度合いがSWNTのキラリティごとに異なり、発光スペクトルによりパパインとDTTを識別できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高温での1分子AFM観察の手順が確立でき、温度を上下させての繰り返し観察が実現した。現状では現象論的なデータにとどまっているため、次年度は物性測定も行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
AFMによる高温での個々の分子観察を行うとともに、AFMを用いた物性測定を行う。SWNTのPLを用いる手法では、スペクトル測定は実験系が確立してきたので多様な条件での測定に入る。ホログラフィック顕微鏡、近赤外顕微鏡観察についてはじっくり実験手順を確立する。研究2年目の結果について論文発表、学会発表を行う。
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