研究課題/領域番号 |
21K06117
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
武藤 梨沙 福岡大学, 理学部, 助教 (10622417)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 藍色細菌 / 生物時計 / 時計タンパク質 |
研究実績の概要 |
藍色細菌の生物時計分子装置は、時計タンパク質KaiA、KaiB、KaiCの3つから構成される。これらのタンパク質を試験管内で混合すると、ATP存在下で24時間周期でKaiCのリン酸化レベルやATPase活性が変化する。これらは、KaiA、KaiB、KaiCの3つが揃わないと観測されないため、KaiABCが時計の最小単位であると考えられている。私たちは、KaiCから周期的にATPが遊離する現象を捉え、KaiC単独でも振動する可能性を示唆するデータを得た(Mutoh et al., 2021)。そこで、本研究では、KaiCが時計の振動子であることを示し、生物時計の特性を示すアミノ酸残基を同定する。 本年度は、核磁気共鳴(NMR)法でKaiCを解析するためのKaiCの設計を行った。NMR測定では、タンパク質の分子量に制限があるため、分子量の大きいタンパク質の解析が難しい。そこで、本研究では、全長タンパク質ではなく、ドメインごとにタンパク質を精製し、その後、ペプチド連結酵素(SortaseA)でドメイン間をつなぐことにより、この問題を解決しようと試みた。KaiCは、相同な配列を持つN末端ドメインとC末端ドメインから成り、ドメイン間はループで繋がれている。SortaseAを用いた実験系を構築するため、KaiCのN末端ドメインタンパク質(KaiCN)とC末端ドメインタンパク質(KaiCC)を複数設計した。その後、それぞれを大腸菌で発現させ、精製し、SortaseAによる連結を試みた。その結果、作製したうちの1つの組み合わせで、全長KaiCを作製することに成功した。次に、その全長KaiCを用いて、KaiCのリン酸化リズムを測定することで活性の有無を検証した。リン酸化リズムを観測できたものの、野生型KaiCと比較すると振幅が小さかった。コンストラクトの見直し、結合手順の見直しが必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度内にNMR測定を予定していたが、蔓延防止等措置法のため、受け入れ先研究所の規定により出張に行くことができなかった。本年度はこれまでに収集していた予備データの解析を進めるに留まっている。ペプチド連結酵素を用いてドメインタンパク質を結合させることはできたが、野生型と比較して活性が低かったため、連結反応の条件や連結部位の配列を見直す必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
コンストラクションの改変を行い、高活性をもったドメイン連結KaiCの作製を目指す。併行して、現在のドメインKaiCの精製法では、時間がかかるため、時間を短出できるように精製方法の短縮化を目指すことでも、高活性KaiCの作製を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
まん延防止等重点措置法が出されていたため、NMR測定や打ち合わせ等の出張へ行けず、次年度に行うことになった。また、測定の直前にフレッシュな試料を準備するため、タンパク質精製に必要な試薬消耗品を次年度に購入するため、次年度に繰越を行った。
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