研究課題/領域番号 |
21K06119
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
井上 詞貴 京都大学, 高等研究院, 特定准教授 (60525369)
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研究分担者 |
BOURQUE GUILLAUME 京都大学, スーパーグローバルコース医学生命系ユニット, 招へい研究員 (80890566)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | エンハンサー / 転移因子 / MPRA / ゲノム進化 / エピゲノム / iPS細胞 / 神経前駆細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、転移因子機能の進化を明らかとするため、大規模並列レポーターアッセイ法(lentiMPRA)を用い、iPS細胞、神経前駆細胞における転移因子のエンハンサー活性を大規模並列的に解析する。 (1)先行研究で行ったATAC-seq、ChIP-seqを指標とし、iPS細胞および神経前駆細胞においてエンハンサー活性を持つと予想される転移因子としてMER11、MER34、MER52を特定した。ATAC-seqピーク領域を指標に、それぞれの活性中心と予想される領域範囲(およそ200bp)を絞り込んだ。ヒト、チンパンジー、カニクイザルゲノムから、それぞれの活性中心とオーバーラップする領域を選定した。また、ネガティブ、ポジティブコントロール配列をそれぞれ100配列含め、合計約17,000配列を解析対象として決定し、MPRAライブラリデザインを完了した。 (2)決定した約17,000配列を合成し、15bpバーコード配列とともにMPRAベクターへクローニングし、MPRAライブラリの作製を完了した。 (3)作成したMPRAライブラリについて、NextSeq mid-output PE150によるシークエンシングを行い、転移因子バリアントとバーコードの配列決定および連鎖関連付けを行った。一つの転移因子あたり約100個の異なるバーコードが連鎖し、十分な複雑性を持っており、高水準のライブラリであることを確認した。 (4)レンチウィルスにパッケージングし、タイター測定するとともに、iPS細胞および神経前駆細胞へのライブラリ感染条件最適化を行った。 (5)バイオインフォマティクス解析パイプライン(MPRAflow, MPRAnalyzeを含む)の確立を完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、本研究で解析対象とする転移因子ファミリーの選定、MPRAライブラリデザイン、MPRAライブラリ作製、MPRAライブラリのクオリティチェック、実験条件最適化、バイオインフォマティクス解析パイプライン確立を完了している。 特にレンチウィルス感染手法に関しては、新規の感染試薬を用いることで、これまでになく高水準の実験条件を見出すことに成功しており、今後十分な複雑性を持ったデータの作出が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
以下の通り、引き続きMPRA実験を実施し、転移因子の機能について大規模機能定量化を行う。 十分量のiPS細胞、神経前駆細胞(各々1x10^7細胞)に対しMPRAライブラリを導入し、導入したバーコードDNAおよび細胞内で発現したバーコードRNAを抽出する。バーコード量をNextSeq High-outputを用いて定量し、転移因子のエンハンサー機能を定量化する。DNAバーコードは1億リード、RNAバーコードは3億リードを得る予定である。ただし、必要に応じて細胞数を増やす、あるいはシークエンシングリード数を増やし、データ量を補い対応する。複製実験を3回行い、データの再現性を確認するとともに、統計的有意性を示す。ネガティブコントロールとの比較により、転移因子の持つエンハンサー活性を定義する。 以上により、ライブラリに含まれる全てのMER11、MER34、MER52転移因子について、iPS細胞、神経前駆細胞におけるエンハンサー活性量を明らかとし、カタログ化する。 このデータセットを基にしたさらなる比較解析を行い、転移因子内の塩基置換とエンハンサー活性との関連、転移因子進化系統解析、転写因子結合モチーフとの関連、近傍遺伝子機能の傾向を明らかとする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定と異なり、転移因子オリゴDNAライブラリの合成を他のライブラリと同時に行ったため、費用の大幅な削減となった。また、シークエンシング試薬キット等の一括発注によるディスカウントにより、費用の削減となった。次年度において、より高品質のシークエンスデータを得るため、シークエンシング試薬キットの追加購入等に充てる予定である。
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